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2020/08
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昇格選考のフィルター 2
 第2のフィルターは、
職務遂行能力は、経験年数に正比例する。
というものです。
1年目より2年目。2年目より3年目の方が、職員の職務遂行能力は上がると考える仮説です。これは、査定昇給前の定期昇給の考え方の基礎にもなっています。また、注意しなければならないのは、経験年数による職務遂行能力にも二つの物差しがあり、一つは配属先の当該業務に対するものであり、もう一つは、一般的な行政組織の中で求められる職務遂行能力です。

 これには、学歴による差を無視しているという指摘もありますが、選考対象者の抽出の時点で、高卒より大卒の基準経験年数の方が少ないのが普通であり、この学歴による抽出条件の違いが、学歴による職務遂行能力の修得効率の違いを勘案しているものだと私は考えています。なぜなら、大卒であったとしても、法科出身者ばかりとは限りませんから、大卒者がすべて法令に対して親和性が高いとはいえないからです。

 選考対象者を学歴ごとの経験年数で抽出する限り、この仮説は抽出の段階で採用されていると私は考えます。

  第3のフィルターは、
ある経歴がある職務に対して有効であるためには、その前に一定限度の経歴又は学歴がなくてはならない。

 昇格のためには、昇格前に一定の実務経歴がなければ昇格後の職務を果たすことができないという仮説です。これは研究職の場合には有用な仮説で、研究の補助員の場合、必ずしも当該研究に関する基礎理論を学んでいるとは限りません。したがって、研究補助員の経歴は、研究員への昇格に当たって、必ずしも有用な経歴とはなりません。専門職には適用されうる仮説ですが、基礎自治体では、あまり必要のない仮説だと思います。

 第4のフィルターは、
ある職務に対して同じくらい有効な学歴と経歴は、それぞれ同等と考えられる。

 これは前提条件として、「同程度に有効」という場合の「程度」がどのくらいのものであるのか、という計測がされていないといけません。昇格対象の職務に対して必要とされる経歴と同程度の学歴を設定するわけですが、学歴を重視していない場合は、この仮説は必要ありません。

 第5のフィルターは、
一定以上の学歴や経歴は、それ以上いくら増加しても有効性は増加しない。

 これは経済理論のようなもので、学歴と経歴の有効性は限界的に逓減するということです。
 経歴について例えると、一定の職務で1年目に100のことを学んだとすれば、2年目には50しか学ぶことはないでしょう。そして、3年目には10か20のことしか学べないのではないでしょうか。この逓減率は、その経歴により異なります。部署内でのジョブ・ローテーションの有無によっても異なります。

 学歴の場合も同じことが言えます。いくつもの学位を持っていることが必ずしもインテリではありません。

 次回は、昇格基準のフィルターの残り3つを取り上げます。

(参考文献)
浜野美雄「配置・昇進」(帝国地方行政学会)
昇格選考のフィルター
 誰を昇格させようかを検討する場合、選考の基準はいくつかあります。

 第一段階として、対象者の抽出から始めますが、これにも基準があります。最も一般的なものは、「学歴」ごとの「勤続年数」です。例えば、ヒラ職員から最初の昇格として「主任」の選考対象者を抽出する場合、高卒ならば勤続10年、大卒ならば勤続6年、といった基準を設けます。

 「学歴」と「勤続年数」は年功序列主義の最たるものです。この是非は別にして、成果や実績の明確でない公務組織においては人事考課の評価と並んで、経歴の検証は非常に難しい課題です。

 昇格選考は具体的にどのように行われるのでしょうか。
 行政組織における一般的な手法は、「演繹法」により行われます。つまり、昇格対象職位(この場合は「主任」)に必要とされる職能の最も確からしい保有者を選ぶわけです。この前提として「主任」に求められる職能が明確化されていないといけません。

 帰納法は、昇進前の経歴等についてすべてを集めて、そのデキを検証し、その結果から結論を導く方法で、非常に手間がかかります。

 演繹法では、いくつかの仮説を立て、その仮説に基づき判断した結果から結論を得ようという方法です。演繹法で用いられる「仮説」は、常識的な当たり前に思われるような事です。それ故に仮説の妥当性の検証も一般的にはされていないと思います。この「仮説」が昇格選考のフィルターと私が呼ぶものです。

(第1のフィルター)
 昇格対象職位の職務に対して、親近度の高い経験は低い経験に優る

 当たり前で当然な基準ですが、選考に当たっては、当たり前のことを手間をかけてキッチリと行わなければなりません。その際重要なのは、序列法、要素比較法、点数法など比較方法についてよく検討した上で、バイアスを掛けず客観的に行うことです。

 例えば、Aさんが選考対象者だとすると、人事課はAさんの経歴を調べ、昇格対象職位に近い経験をしているかしていないか、経験しているのならば、どれくらいの親近度があるのかを検証します。この場合、言うまでもないことですが、どの部署でどの業務を担当したかが重要です。

 第2のフィルター以降は、次回にします。

(参考文献)
浜野美雄「配置・昇進」(帝国地方行政学会)
自己申告書とキャリア意識
 目標管理と能力考課(又は簡易コンピテンシー)をセットにした人事考課制度を中心とし、面接制度や自己申告制度を取り入れている自治体もあります。

 自己申告制度は、異動希望のほか、現在の職務に対する適性や満足度、問題点等を自己申告書により、職員に申告してもらう制度です。

 この申告書を上司との面接を経た上で、上司を通じて人事課へ提出している自治体もあれば、これを個々の職員と人事担当課限りでやりとりをするところもあります。

 自己申告に上司が関わる場合は、上司が当該職員のキャリア形成に対して助言ができます。後者の場合は、それができませんが、当該職員のホンネが自己申告書に書ける、というメリットもあります。

 ホンネが書ける場合と、そうでない場合の申告書の内容の比較をしたことがありませんので分かりませんが、私は、上司との面接を経て取り扱われるべきであると考えます。なぜなら、職員のホンネは、他の方法でも聞き取ることは可能であり、私は人事制度は基本的に透明であるべきであると考えるからです。

 職員の経験年数や職種により、異動年数のサイクルは異なりますが、「異動したい」という希望や「異動したくない」という希望のほか「○○課へ異動したい」という具体的な異動意向についても、自己申告書により申し出た異動意向が、果たして、何割くらい叶えられているのか、というデータも公表すべきであると、稲継裕昭氏も近著「プロ公務員を育てる人事戦略」で述べておられます。

 なぜなら、異動意向が叶った職員は、通常、それを口にしません。しかし、異動意向が叶わなかった職員は、回りに不満をもらすものです。実態はどれくらいの意向が叶っているのか誰も知りません。

 終身雇用を前提とし、ポスト補充は内部調達による閉鎖システムにおける人事は、人事課が当該組織内の職員のキャリア形成に絶対的な権限を持ちます。職員の職業人生を左右すると言っても過言ではありません。人事異動こそが公務員のキャリアともいえます。

 今までのように受け身のキャリアではなく、職員自らが積極的にキャリアプランを抱き、その実現のために、自己申告制度を活用するようになるのが理想です。キャリア意識を持っている人の自己申告書と、そうでない人のそれとは、自ずと内容が異なるものとなるでしょう。面接制度を通じ、上司は、部下に対して、キャリア意識を持つよう促す機会を持つことができます。キャリア形成を考えることで、職員にも自学の姿勢が身につきます。

 人事担当課の役割は、こうした職員のキャリアプランと組織の必要とをマッチングさせ、職員の能力開発をする一方で人的資源の配置を最適化し、組織パフォーマンスの最大化を維持することを通じて、住民サービスの向上を図ることにあります。
職員の意向に応じるため
my second daughter


10年前 -- 下の娘 by 曽野田欣也




 人事異動は、次の理由によっても行われます。
職員の意向に応じるため

 サラリーマンは、「辞令書一枚でどこへでも行き、どんな仕事でもやらなければならない」といわれています。それは人事異動の一面を言いえて妙ですが、すべてではありません。長期雇用を前提とした内部調達方式の人事の場合、人事権は組織の強力な権限ではありますが、そこで働く人間の「意向」を無視しては成り立たないことも事実です。

 それでは、職員はどのような理由により、異動申告をするのでしょうか。

 まず、考えられるのが、これです。
 職場の人たちとうまく行かないから

 長年同じ部署にいると、異動したくなるもので、かと言って、行きたい部署もない場合は、異動意向も強くはありませんが、同じ職場の上司や先輩などとうまく行かない場合は、異動意向は非常に強くなるものです。

 職場の人たちとうまく行かないことを理由とする異動意向は、ワガママなようですが、人事課も耳を傾けるべき理由であると考えます。なぜなら、こうした人間関係により、職員のモラルが低下するのは当然であり、最近ではメンタルヘルスの問題が管理者の責務として非常に重要なものであると捉えられているからです。

 こうした意向は、「自己申告書」等の制度で職員が申し出のし易い環境を整備しておく必要があるでしょう。もちろん、人事担当課は、こうした申し出に対して盲目的に従うべきではありません。すべての異動要因に関する情報の扱いと同様に、こうした人間関係の不和も情報であり、その情報には「検証」が必要です。また、こうした意向を人事に伝える側としては、その情報に責任を持つ必要があるでしょう。なぜなら、本人は一過性の人間関係のつもりであっても、その情報は人事情報として蓄積されるからです。単なるワガママと判断された場合は、当該情報提供者は、人事担当課の信頼を失うことになります。

 次に考えられるのが、これです。
自分のキャリア形成のため

 長期雇用で一つの自治体で退職まで勤め上げる場合、公務員のキャリア形成として、「どこの部署に配属されたか」や「どのような仕事に携わったか」ということが重要になります。個々の職員は、自分の適性と関心に基づき、行ってみたい部署ややってみたい仕事を求めて、配置を希望することができます。キャリア形成面でのこうした積極的な異動意向は、人事担当課としても誠実に受け止めないといけません。この場合においても、人事考課その他の人事関係資料を参考にして慎重に検討することになります。

 最近は少なくなって来ていると思いますが、最後に考えれらるのが、これです。
 昇進のため

 先にも触れましたが、組織においてすべての職員に平等に昇進機会の与えられている組織はないといえます。上昇志向のある職員は、各組織において「エリートコース」と呼ばれているものに乗りたいと考えるでしょう。そして、そのコースとは何か、と問えば、昇進機会の多いと噂される部署へ配置されることを望むのが人情です。このような異動意向は分かりやすくて良いです。

 以上見てきたとおり、配置は様々な必要に応じて、その必要の生じた事情や要因を様々な角度から検証した上で検討され、実行されるか、あるいは実行されないかが決まります。したがって、一部の部署を一部の人材で独占状態にするのは、組織的に健全ではありません。

 また、配置の「人材育成」の面からは、昇進機会に関係なく、あらゆる部署への配置を考える必要があります。個人のキャリア形成は重要であり、モチベーション管理のためにもこれは優先順位の高いものですが、人事を考える上で、個人の必要よりも、組織の必要が常に優先されるものであることは言うまでもありません。そして、組織は組織の必要を個人に説明する機会を持つよう努力する必要があるでしょう。

 なお、職員の意向は、必ずしも一つの理由や要因に基づくものではなく、複数の事情によって一つの意向として表れる場合も多々ありますから単純ではありません。繰り返しになりますが、いずれの場合においても、職員の意向も他のすべての情報同様に、多面的に分析、検討して結果を出します。
業務繁閑の是正と定員管理
麦畑
写真は「イングランド 写真の日々」から「麦畑
by ukphotography

もうすぐ義理の母が、このイングランドから遊びに来ます by 曽野田欣也


 人事異動の次の要因は、これです。
業務繁閑の是正のため

 組織で目的を達成することの合理性の裏返しとして、セクショナリズムの弊害があります。また、年度単位で仕事が行われるため、異動サイクルは一年度を単位として考えます。年度内における異動は難しいものです。

 さて、人事課が行う部課長とのヒアリングの目的の一つは、配置職員数の適正化です。各所属は、現有の定員又は要望する増員の必要性を主張するために、当該所属の事務事業について人事当局に説明します。ヒアリングの結果を受けて人事課で定員の査定を行います。

 定員査定を行う場合、パーキンソンの法則を肝に銘じておかなければいけません。管理者は、しばしば部下の数が減ることを嫌います。

 また、年度を通じて同数の定員が必要である部署ばかりではありません。その場合は、年度内のどの時点の事務量を標準とするかを検討しなければいけません。季節的な繁忙であるときには、当該期間だけ非常勤職員を任用して対処することもありますが、基本的にはプロパー職員による事務処理を要するものを基準として業務量を計測します。

 庁内分権の名の下に、人事権の一部を部局長に移譲し、当該部局内の所属間に限った年度内の人事異動を行う場合もあります。この方策は、愛知県のように部局別の定員枠配分を行っている自治体においてみられます。

 本エントリーは、人事異動の要因についてではなく、定員査定の話のようになってしまいました。この要因により異動を考えるほど、今の自治体には定員上のゆとりがない、というのが実態であろうと思います。

 なお、私が定員査定の勉強を進めるに当たって、同志社大学様には、「同志社政策科学研究 第3巻 安枝英教授追悼論文集」をご恵与頂きました。本論文集には、自治体人事を考えるに当たって有用な研究が多く掲載されています。
 ここに紹介するとともに、この場を借りてお礼申し上げます。

(参考)
橋本賢二「地方公務員の定数管理に関する考察」(同志社政策科学研究 第3巻
都市自治体の戦略的な組織定数マネジメント」(都市センター)
名古屋市役所局長経験者が語る局長の思いとマネジメントの諸相」(PDF)
愛知県名古屋市「複数年度定員配分の導入」(PDF)
関本耕司「定員管理上の定数査定業務等に関する一考察」(PDF)
鳥取県「平成19年度に向けた定数編成査定状況について」 鳥取県では定数の査定過程を公表しています。
福岡県「新たな定数管理方式の導入について 資料3」(PDF)
プロフィール

きんた

Author:きんた
Yahooブログ「ある地方公務員の隠れ家」(since 2007/2/24)から移転しました。

【自己紹介】
・1964年 静岡県浜松市生まれ

【趣旨】
まちづくりと公共政策について考えます。
本ブログは私的なものであり、私の所属する組織の見解を反映するものではありません。

【論文等】
政策空間 2007年10月
複線型人事は新たなモチベーション創出への挑戦
政策空間 2009年2月
資源ベース理論による自治体人事戦略の構築

【連絡先】
下のメールフォームからお願いします。

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