
写真は、プレジデント「
なぜ日本の会社は「働きがい」がないのか」(10/12)から引用
■従業員価値を決める五つの軸とは
このモデルによるとベスト25社とそうでない企業を分ける基本軸は五つあり、信用、尊敬、公正、誇り、連帯感であると主張される。簡単に紹介すると、
(1)信用とは、従業員が責任ある仕事を任されている
(2)尊敬とは、仕事を行うために必要なものが与えられている
(3)公正とは、学歴や人種などに関係なく、公正に扱われている
(4)誇りとは、自分たちが成し遂げている仕事を誇りに思う。この会社で働いていることを胸を張って人に伝える
(5)連帯感とは、この会社は入社した人を歓迎する雰囲気がある
出典:プレジデント「なぜ日本の会社は「働きがい」がないのか」(10/12)
長期雇用を前提とした組織における人事制度はどうあるべきか、と考えるときがあります。
長期雇用は、終身雇用制と言っても同じです。公務員の世界では、終身雇用制は「当たり前」のものになっています。バブル期には日本型経営が賞賛され、そのときは終身雇用制が社員の忠誠心を高め、労働生産性を上げているといった指摘もされました。日本人は組織に対する忠誠心が高い、と言われていました。
行政のように終身雇用制が当然となっている組織では、その制度による「有り難味」が我々公務員の意識の中にあるのでしょうか。ただ単に「クビにならない」という身分保障は見直されるべきだと思いますが、我々公務員が社会人として、職業人として、何を考えて仕事をしているのか。その意識を分析した上で、組織はどのような人事施策を打てるのかを考える必要があります。
組織としての生産性を高めるには、職場を働きやすいものにすることが必要である、と私は考えています。
働きやすい職場を作るためには、働きやすさの阻害要因を排除することが必要ですが、私はこれには消極的なアプローチと積極的なアプローチあると考えています。
消極的なアプローチとは、日常の業務の中でも行われていることで、例えば市役所の場合、組織の縦割りから生じる業務の調整や権限争いのほか、人間関係の感情的な摩擦といった生産性のないことに、職員がエネルギーを消耗しないで済むようにすることが挙げられます。こうした役割は、中間管理職である係長や課長が主に担うべきです。
積極的なアプローチとは何でしょうか。これは終身雇用制とも関連しており、制度的なものです。つまり、積極的なアプローチとは、職員が定年まで安心して働けるための人事施策を指します。その組織で、職員が定年まで働くことを前提にして、自分のキャリアを描くことができる、ということが必要です。ただ単に身分が保障されていてクビにならないという終身雇用制は、年功的な給与制度と相まって、百害あって一利なしです。
キャリア形成や働く人の価値観の多様化といった視点から脚光を集めているのが、「
ワークライフバランス」です。この言葉は、アメリカが発祥地であると言われていますが、アメリカでは一般的に終身雇用制を前提としていません。労働市場は開放的で、転職が盛んです。働く人は自分のキャリアを自ら考え、キャリアアップのために転職を繰り返します。このように日本の行政とは異なるアメリカの民間企業の人事施策を参考にすることは、必ずしも適当ではないでしょう。日本の人事課は日本の風土に合った施策立案のために、知恵を絞らなければなりません。
ワークライフバランスは人事戦略である、という認識は、民間企業では広がりつつあります。
公務においてワークライスバランス戦略を考えるときには、終身雇用制が当たり前になっていることにより、一面、その戦術の開発に頭を悩ませることになるでしょうが、他面、職員のキャリア形成という視点から考えれば、案外ヒントが多く隠されているかもしれません。公務におけるワークライフバランス戦略は、欧米や日本の民間企業のベストプラクティスを模倣する前に、そうした取り組みを職員に紹介しつつ、まず、職員の声を聞くことから始めるべきです。
(参考)
JIL「
ワーク・ライフ・バランスの取組みの国際的動向」
人材バンクネット「
仕事と生活に関するアンケート」
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