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2010/02
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内部調達人事とエンプロイアビリティ
Sweetsらぶ! 
写真は「Plumerian cafe -365photo-」から
Sweetsらぶ!」 by nanami



 役所の世界では、終身雇用が当たり前になっています。大学を卒業してから60歳になるまで、40年近く同じ組織で働くことになります。

 行政事務に携わっている市役所職員の場合、5年程度で異動を繰り返すのが一般的です。若手職員の異動サイクルは比較的短く、3年程度とされています。新人の配置は「10年3部署」と市役所の世界ではよく言われます。
 
 私が市役所に採用されたときの人事係長の方が、新人の説明会で「君たちにはゼネラリストになることが期待されている」とおっしゃていました。3年から5年程度での異動は、ゼネラリストとして養成することが目的と言えるでしょう。

 人事異動は適材適所が基本ですが、「どこでも誰とでも仕事を任せられる人材」であることが理想です。特定の分野でしかモチベーションを維持できないとか、特定の人とは相性が悪いというのは不都合です。少し古い言葉を使えば、この職員のエンプロイアビリティは低い、と言わざるをえません。

 いろいろな部署を経験した職員ほど、職員としてのエンプロイアビリティが高いと推測されます。人事異動は職能開発の手段であり、各部署でどのような仕事ぶりであったかを検証することは個々の職員のキャリア形成にとって非常に重要です。

 しかし、人には適性があります。職業的な興味や関心があるのも事実です。誰とでも何でもできるスーパーマンはいません。また、合併して組織が大きくなり、業務の専門化が進むに従って、新たな業務への対応は難しくなります。小さな組織のときは誰にでもできたものがで、大きな組織になると特定の人にしかできないものになってきたりします。

 合併による影響は所与ですから、職員個人として重要なのは、所与の条件に自分の能力を合わせるようにする努力の一言です。これまで内部調達人事が当然の組織では、職員のキャリア形成や能力開発には、人事がその責任を負って来ました。しかし、20年程前からは、職員の自律的な能力開発が求められています。「自ら考え行動する職員」を理想の職員像としている自治体は多いと思いますが、これもこうした流れの一部です。エンプロイアビリティに関心のなかった我々公務員は、合併により悠長ではいられなくなりました。

 合併後の17万都市の行政は、私にとってもキャリア上の挑戦です。人口9万人だった旧磐田市での経験だけでは明らかな不足を感じています。そこで、私は自主勉強会などをいくつかやっています。その中には個人的に具体的な検定試験などを目標にしているものもあります。これは、自分のエンプロイアビリティを高めるための自律的な努力です。こうした行動を起すことにより、何より毎日の仕事がおもしろくなり、行政の役割に対しても遣り甲斐を感じられるようになって来るのですから不思議なものです。

(参考)
濱口桂一郎「日本型雇用システムにおける人材養成と学校から仕事への移行(PDF)」(2009/7/21)
谷内篤博「プロフェッショナルの人材マネジメント(PDF)」(2007)
厚生労働省「エンプロイアビリティの判断基準等に関する調査研究報告書について
厚生労働省「キャリア形成を支援する労働市場政策研究会報告書」平成14年7月31日
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職場でのイライラ要因、トップは
Sweetsらぶ
写真は「Plumerian cafe -365photo-」から
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職場でのイライラ要因、トップは「不機嫌な同僚」=英調査
ロイター 2010/02/11 15:39 JST
英調査会社オピニウムが1836人を対象に実施した調査によると、職場でのイライラの原因のトップは「気難しかったり不機嫌だったりする同僚」(37%)であることが分かった。

 日本であれば、職場でのイライラ要因は何がトップになるでしょうか。同じ調査から、他の要因も挙げられています。
コンピューターが遅い(36%)
職場でのうわさ話・陰口(19%)
職場独特の用語の使用や経営陣の言葉遣い(18%)
電話で大声で話す人(18%)
職場の安全衛生が細か過ぎる(16%)
トイレのマナーが悪い(16%)
会議に遅れたり来なかったりする人(16%)
キッチンを使用後に片付けない人(15%)
空調が寒過ぎる(15%)

 「コンピューターが遅い」というのは、良く分かる気がします。インターネットで情報収集しているときに、ブラウジングが遅いのにもイライラします。
 「職場でのうわさ話や陰口」というのも分かりますね。どこの組織にも人のことを好き嫌いで悪く言う輩がいます。
 「職場独特の用語の使用や経営陣の言葉遣い」というのは、ピンと来ません。特に前者の職場独特の用語の使用がなぜイライラの要因になるのでしょうか。自分自身も使う言葉ではないでしょうか。また、後者の「経営陣の言葉遣い」というのは、管理職は非管理職から嫌われるものなのでしょう。個人は自分の裁量で自由に仕事をしたいものです。経営方針に個人の目標を向けさせるというのは簡単なことではありません。
 「空調が寒すぎる」というのは、イギリスらしくて笑えます。

 「最も嫌われるオフィス用語」として、次の表現が紹介されています。
 「Thinking outside the box」(既成概念にとらわれないで考える)(21%)
 ここでやっと分かるのが、「職場独特の用語の使用」です。こういうことだったのか、という感じです。そして、もう一つ分かることは、日本もイギリスも、そして市役所も民間も、管理者から我々は同じことを言われている、ということです。変化に対応できないと競争には勝てません。なお、既成概念で物事を考えないようにするには、ゼネラリストとして人材を養成することも一つの手段です。今現在、目の前にある目的を達成するためには、専門家集団によって対応するのも一つの手ですが、競争優位を持続的なものとするためには、スペシャリストとゼネラリストがうまく機能する組織でなければなりません。
市議会:定数削減、直接請求へ
沼津市議会:定数削減、直接請求へ 自治会連が署名提出 /静岡
毎日新聞 2010/02/09
 沼津市内の全297自治会でつくる市自治会連合会の高木孝会長(68)は8日、市議会定数を現行の34から21へ減らすための議員定数条例の改正を求め、市選挙管理委員会に5582人分の署名簿を提出した。
行政委員の報酬 全国初の一律日額に
県非常勤行政委員の報酬 全国初の一律日額に
中日新聞 2010/2/9
 静岡県の教育や選挙管理など非常勤行政委員の報酬支給方法について、川勝平太知事は8日の定例記者会見で、全9委員会の委員66人を月額から日額支給にする考えを示した。県人事室によると、川勝知事は改正条例案を2月議会に提出する方針で、可決されれば全国の都道府県で初となる。
 報酬単価については、常勤行政委員の額を基準にし、委員は日額3万5400円、委員長や会長の役職者は同3万8900円とする。

評価項目ごとに研修
評価項目ごとに研修=国家公務員に新設−人事院
とれまがニュース 2010/02/06
 人事院は6日までに、今年度から国家公務員の新人事評価制度を導入したのを受け、「コミュニケーション」や「部下育成」など、評価項目ごとに特化した研修を新設する方向で検討に入った。職員の能力と士気を向上させるのが目的で、職員の自主参加が基本。各府省で1回目の評価結果が出そろう今秋以降に実施する予定だ。

 人事評価は、「行動」「項目」「段階」の3つの選択プロセスで構成されます。
 評価対象となる「行動」なくして、評価はありえません。ですから、管理者は部下の行動を常に観察する必要があります。ここでいう行動とは、部下が歩いているとか、コピーをとっているという一般的な行動を指しているのではなく、職務に関連した行動に限られます。職場での飲み会への参加などは、職務とは関係がありませんから、これは人事評価の対象となる行動ではありません。

 行動が観察できたら、次にプロセスとして、その行動が人事評価のどの「評価項目」に該当するかの判断をします。記事の例をとれば、評価項目に「コミュニケーション」があります。この「コミュニケーション」とはどういう能力かということを定義します。そして、例えば、ある職員が会議の中でファシリテーター的な役割を果たした場合は、この評価項目で評価する、ということを決めておく必要があります。また、会議の参加者から意見を引き出し、効率的な会議の運営に寄与するなどといった評価項目ごとの「着眼点」を示しておくことが必要です。

 人事評価の最後のプロセスとして、「段階」を決定します。これは、評価対象として選択された行動が、どの評価項目に該当するかが決定され、その評価項目においてどの程度のデキであったかのグレード(段階)を決めます。

 以上のプロセスは、「フィギュアスケートの採点法」である「GOE(Grade of Execution)」に似ています。つまり、人事評価は「判定」なのです。人事評価で難しいのは、職務遂行に当たって、必ずしもすべての評価項目に該当する職務行動を、すべての職員がとるわけではない、ということです。

 フィギュアスケートの場合、判定結果は数値化され、点数により競われ勝負が決まります。人事評価も同様です。人事評価がフィギュアスケートと異なるのは、フィギュアスケートの点数が絶対評価なのに対し、人事評価の場合は、査定に分布率を決めた時点で相対化される点にあります。

 以上から人事評価における評価基準や相対化の方法などは、職員に公開するべきことが分かります。なぜなら、評価基準等を知ること無くして、職員は良き職務行動が執れないからです。

 また、フィギュアスケートは勝負事ですから勝つことが一番大事です。しかし、人事評価の場合に大事なのは、高い査定を得てライバルに勝つことではありません。フィギュアスケートの浅田真央さんが演技を終えた後、点数が出るまで、コーチと演技のデキについて話し合っています。これは、人事評価でいうところのフィードバックです。演技の反省です。良かった点と悪かった点を確認し、悪かった点は原因を追究し、次回までに修正します。このフィードバックにより次ぎの演技で、より良いパフォーマンスを披露することができます。そして、人事評価において一番大事なのは、職員が上司からフィードバックを受けて、より良いパフォーマンスをすることなのです。

 フィギュアスケートで勝つとメダルがもらえますが、人事評価の場合、高いパフォーマンスの職員は、何がもらえるでしょうか。それは、その仕事から得られる充実感や達成感、そして職業人としての成長感ではないでしょうか。これらのものは、いくら給料が高くても、いくら高い地位に就いたとしても、必ずしも得られるものではない貴重なものだと私は思います。

(参考)
野原茂著「改訂3版 人事評価着眼点シート」(経営書院)
次官降格も容易に
国家公務員法改正案:首相要求で幹部異動 次官降格も容易に
毎日新聞 2010年2月4日 東京朝刊
 政府が今国会で提出する国家公務員法等改正案の素案が3日分かった。「内閣の重要政策を実現するため」に首相が各閣僚に部長級以上の幹部の異動を要求できる規定を設けるなど、首相官邸の意向を幹部人事に直接反映できる仕組みを明文化する。(中略)

 次官級は、局長級と「同一の職制上の段階に属するとみなす」と規定。降格を「勤務実績がよくない場合」などに限る国家公務員法規定に該当しないようにする。麻生政権が昨年の通常国会で提出した改正案(廃案)に盛り込まれた、局長級を降格できる「特別降任」の規定は盛り込んでいない。【小山由宇】
岩出誠著「実務 労働法講義」
実務 労働法講義 我々地方公務員には労働基準法の適用があります。今回の労基法改正時、地方公務員には適用除外とされていたものが、平成21年人事院により、この改正労基法に準じた取扱いが国家公務員にも勧告されたのを受け、地方公務員においても労基法の適用除外から当該規定が削られました。

 地方公務員の勤務条件は、国家公務員に準拠するのが原則ですが、週休日である土曜日に勤務し、当該勤務時間分を同一週に振り替えられなかった場合の取扱いは、国と地方とでは異なることになります。

 いずれにせよ、今回の労基法改正は地方公務員にそのまま適用されるわけです。
 「労務事情」(産労総合研究所)におけるコラムなどを楽しみに拝見させて頂いている、ロア・ユナイテッド法律事務所岩出誠先生の著書「人事労務担当者の疑問に応える 平成22年施行 改正労働基準法」(第一法規)は、民間企業だけではなく、自治体の人事担当者にとっても必携です。

 そういえば、岩出先生は「実務 労働法講義」上下巻(民事法研究会)の第3版を出版されました。喉から手が出るほど欲しい本ですが、非常に高価で私には手が出ません。労働法は判例も豊富で、勉強していても非常に楽しい分野です。
事務次官から局長への降格を可能に
乱舞~RANBU~
写真は「Plumerian cafe -365photo-」から
乱舞~RANBU~に出演します」 by nanami
いつも写真を引用させて頂いているnanamiさんがイベントに出られるので、ここに宣伝させていただきます。


事務次官存続、降格は可能に=公務員制度改革法案骨子-首相提示
 鳩山由紀夫首相は29日午前の閣僚懇談会で、今国会に提出する国家公務員制度改革関連法案の骨子を示した。新設する「内閣人事局」で各府省の幹部人事を一元管理し、事務次官級から局長級への降格を可能にすることが柱。

 役人の世界では「降格」に対してマイナスイメージが強すぎるのではないでしょうか。昇格が唯一の自己実現の手段であるというシンプルなキャリア観の弊害ともいえます。弊害とは柔軟な人事ができない、言い換えれば、人事が硬直しているということです。硬直した人事がなぜいけないか、というと、硬直した人事では変化に対して柔軟に対応できないからです。

 人間社会のことに人間組織が対応するわけですから、物事の判断がウェットになるのはつきものです。しかし、プロフェッショナルとはそうしたウェットな感情を排除するところから始まります。人事は組織目標の達成のため冷徹に考えます。プロに徹した人間を相手にしても、人事をやるのも人間です。人事が相手にするのも人間です。ここに難しさがありますが、自分の考えに疑問を生じたときには、「好き嫌い」で判断しているか、と自問してみるよりも、「目的は何か」という原点に立ち戻って考えてみることが有用です。これは、以前の上司である人事担当課長から教わりました。

 公務員の降格は、もっと柔軟にできるようにすべきであると私は考えています。昇格には必要な在級年数など形式的かつ客観的な基準が設けられていますが、降格にはこれがありません。公務員の世界では、職員の意に反する降格は「皆無」であると言っても良い程珍しいものです。昇格させてみたが、期待に反して管理職としての適性に欠け適任ではなかったという場合ばかりではなく、本人が降格を望んでも世間体として降格を申し出ることができない場合もあります。働く人の側からも降格が必要なときはあるということです。

 私は、採用時のように、昇任はすべて条件付にしたら良いと考えています。また、降格しても敗者復活戦を保障します。希望降格制度も必要でしょう。こうした人事上の施策を任命権者の恣意で行うのではなく、明文化された制度として実施することが、働く人の能力を最大限活用するために必要です。「民間企業には希望降格制度はない」という人もいます。また「民間で昇格後の職責が務まらなければクビだ」という人もいます。「だから公務員は甘い」という人もいますが、降格の必要性は、当該職員の不適格性ばかりにあるのではありません。家庭の事情等もあるわけです。そうした事情にまったく配慮しない人事や、社員を簡単にクビにできるような雇用関係は不健全であり、そのような解雇は「民間は厳しい」というような話ではなく、ただの「解雇権濫用」といえるのではないでしょうか。

 別の視点から「降格」を考えてみます。
 以前、「昇格選考のフィルター」で考察したように、昇格者を決めるに当たっては、複数の仮説を立て、その仮説に照らして考えてみて、最も確からしい候補者を昇格者として選択します。「最も確からしい」人を選ぶのであって、絶対に正解であるということは言えません。最も確からしいと判断しても、そうではない場合もありえます。また、適材適所という意味では、昇格に値する適材であったとしても、配置の結果として適所ではなく、昇格後の職を期待どおりには担えないという場合もあります。この場合は、降格させなくても配置換えで対応できますが、前者の場合には降格が必要です。地方公務員法によるところの分限処分としての降格です。

 最も確からしい人物を昇格させて、それが正解ではない場合、一番の問題は、効率的な行政運営の妨げになる、ということです。「昇格選考のフィルター」により検証した人物が、分限による降格を要する場合はありえますが、実際には皆無です。事務次官級となれば、配置換えできるポストも限られているでしょう。それにしても、事務次官級を降格させる場合とは、どのようなケースを想定しているのでしょうか。

(参考)
岩出誠「どんな場合に従業員を降格することができるのですか?
J-Cast News「官庁だけにある希望「降格」制度」(2008/7/2)
プロフィール

きんた

Author:きんた
Yahooブログ「ある地方公務員の隠れ家」(since 2007/2/24)から移転しました。

【自己紹介】
・1964年 静岡県浜松市生まれ

【趣旨】
まちづくりと公共政策について考えます。
本ブログは私的なものであり、私の所属する組織の見解を反映するものではありません。

【論文等】
政策空間 2007年10月
複線型人事は新たなモチベーション創出への挑戦
政策空間 2009年2月
資源ベース理論による自治体人事戦略の構築

【連絡先】
下のメールフォームからお願いします。

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