行政とコスト意識
2008-07-21(Mon)
救急車、軽症者の利用が大幅減…財政破たんの夕張で意識変革
2008年7月16日 読売新聞
救急車を「タクシー代わりに使おう」という意識の人もいるでしょうが、実際には救急車を呼ぶべき事態なのか否かを判断するのは、難しいこともあろうかと思います。
我々は行政サービスの提供者としてだけでなく、その受け手としてもコスト意識を持つ必要があります。これは、税金そのものの使い方だけでなく、税金を使って提供される行政サービスにも適正な使い方があることを意味します。
コスト意識が負担の公平感という観念にまで敷衍されていると見ることもできます。フリーライダーが問題とされる由です。
この意識は、行政サービスだけでなく、様々な分野で顕在化しています。例えば、携帯電話の販売方式にもこれが表れており、DoCoMoのバリューコースなどこれまでインセンティブとして販売価格から割り引かれていた奨励金を含まない販売方式がビジネスモデルとして登場しています。
いずれにせよ、こうした実態を掴むのが難しい人の社会的意識の現状や変化を読み取ることも政策立案においては、重要な要素となります。
2008年7月16日 読売新聞
全国各地で安易に救急車を呼ぶケースが目立つ中、財政破たんした北海道夕張市では、軽症者の利用が大幅に減少している。
危機感を抱く医療関係者らの呼びかけに、住民の間で「タクシー代わりに使うことはやめよう」という意識が芽生え始めた。(北浦義弘)
危機感を抱く医療関係者らの呼びかけに、住民の間で「タクシー代わりに使うことはやめよう」という意識が芽生え始めた。(北浦義弘)
救急車を「タクシー代わりに使おう」という意識の人もいるでしょうが、実際には救急車を呼ぶべき事態なのか否かを判断するのは、難しいこともあろうかと思います。
我々は行政サービスの提供者としてだけでなく、その受け手としてもコスト意識を持つ必要があります。これは、税金そのものの使い方だけでなく、税金を使って提供される行政サービスにも適正な使い方があることを意味します。
コスト意識が負担の公平感という観念にまで敷衍されていると見ることもできます。フリーライダーが問題とされる由です。
この意識は、行政サービスだけでなく、様々な分野で顕在化しています。例えば、携帯電話の販売方式にもこれが表れており、DoCoMoのバリューコースなどこれまでインセンティブとして販売価格から割り引かれていた奨励金を含まない販売方式がビジネスモデルとして登場しています。
いずれにせよ、こうした実態を掴むのが難しい人の社会的意識の現状や変化を読み取ることも政策立案においては、重要な要素となります。
(記事続き) 約1万2000人が暮らす夕張市。市消防本部によると、破たん前年の2006年には救急車が734件出動した。この年の全国平均(人口1万人あたり)は410件だから、同市の出動件数はかなり多い。「水虫になった」「足が痛む」といった緊急性のない119番通報が相次ぎ、搬送者の約4割は軽症者。2台しかない救急車が出払ってしまい、重症者を消防車で運んだこともあった。
炭鉱町として栄えた土地柄から、市の関係者は「炭鉱会社が社員の住宅費や光熱費を負担していたため、住民の間に『公的サービスはいくら使っても大丈夫』という甘いコスト感覚が定着していた」と振り返る。
しかし、07年3月に市が財政再建団体に移行すると、公的サービス削減の一環で、唯一の救急病院だった市立総合病院が診療所に縮小された。重症者を片道1時間以上かけて札幌市や岩見沢市などの病院に搬送しなければならなくなり、救急車の利用を正常化させる必要性が高まった。
「救急車は限りある資源です」。市立総合病院を引き継いだ診療所の責任者となった村上智彦医師(47)は、患者たちに救急車の適正利用を呼びかけた。「住民サービスの権利ばかりを主張すると公的医療の制度が壊れてしまう」と危機感も強く訴えた。緊急性がないのに救急車で訪れた人を厳しく諭し、「患者をしかる先生」と評判にもなった。
市内に五つある診療所と消防本部も連携を始めた。救急隊員は患者の症状を見てから、まず、診療所にいる患者のかかりつけ医に電話で相談。そのうえで、搬送の必要性を判断するようになった。破たん前は、救急車はほぼすべての患者を市立総合病院に搬送していたが、連携後は、緊急性のない場合は搬送を控えるようにしているという。
その結果、今年は6月末までの半年間で、救急車の出動件数が前年同期比で99件少ない254件に、軽症者の利用も同61件減の73件にまで減少した。
炭鉱で長年働き、肺気腫(きしゅ)の治療で通院する男性(83)は「以前は救急車をタクシー代わりに呼ぶこともあったが、今はみんなの意識も変わってきた」と話す。救急車の世話にならないようにと、健康づくりのため朝や夕方に市内を散歩するお年寄りの姿も多くなった。診療所に検査に訪れたアルバイト男性(71)は「毎日1時間ほど、速足で歩いて汗をかくようにしている。救急車が必要にならないよう病気を予防しないとね」と笑顔を見せた。
今年に入り、重症患者の搬送に支障をきたした例はない。市消防本部の田中義信管理課長(45)は「軽症者搬送の減少に驚いている。医師と住民の協力が実を結び始めている」と手応えを感じている。
炭鉱町として栄えた土地柄から、市の関係者は「炭鉱会社が社員の住宅費や光熱費を負担していたため、住民の間に『公的サービスはいくら使っても大丈夫』という甘いコスト感覚が定着していた」と振り返る。
しかし、07年3月に市が財政再建団体に移行すると、公的サービス削減の一環で、唯一の救急病院だった市立総合病院が診療所に縮小された。重症者を片道1時間以上かけて札幌市や岩見沢市などの病院に搬送しなければならなくなり、救急車の利用を正常化させる必要性が高まった。
「救急車は限りある資源です」。市立総合病院を引き継いだ診療所の責任者となった村上智彦医師(47)は、患者たちに救急車の適正利用を呼びかけた。「住民サービスの権利ばかりを主張すると公的医療の制度が壊れてしまう」と危機感も強く訴えた。緊急性がないのに救急車で訪れた人を厳しく諭し、「患者をしかる先生」と評判にもなった。
市内に五つある診療所と消防本部も連携を始めた。救急隊員は患者の症状を見てから、まず、診療所にいる患者のかかりつけ医に電話で相談。そのうえで、搬送の必要性を判断するようになった。破たん前は、救急車はほぼすべての患者を市立総合病院に搬送していたが、連携後は、緊急性のない場合は搬送を控えるようにしているという。
その結果、今年は6月末までの半年間で、救急車の出動件数が前年同期比で99件少ない254件に、軽症者の利用も同61件減の73件にまで減少した。
炭鉱で長年働き、肺気腫(きしゅ)の治療で通院する男性(83)は「以前は救急車をタクシー代わりに呼ぶこともあったが、今はみんなの意識も変わってきた」と話す。救急車の世話にならないようにと、健康づくりのため朝や夕方に市内を散歩するお年寄りの姿も多くなった。診療所に検査に訪れたアルバイト男性(71)は「毎日1時間ほど、速足で歩いて汗をかくようにしている。救急車が必要にならないよう病気を予防しないとね」と笑顔を見せた。
今年に入り、重症患者の搬送に支障をきたした例はない。市消防本部の田中義信管理課長(45)は「軽症者搬送の減少に驚いている。医師と住民の協力が実を結び始めている」と手応えを感じている。
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