人事考課の決定過程
2008-08-14(Thu)
同業他社の方から、しばしば人事考課結果の相対化について訊ねられることがあります。本日は夏季休暇を頂いていますので、この時間を利用して論点を簡単に整理しておきます。
人事評価で絶対評価をする場合においては、その公正性や納得性を担保するため、認定評価を行うことは考えられません。あくまで到達度評価を行うべきです。これは目標管理において明らかです。
しかし、能力考課においては、コンピテンシー以外の方法では認定評価のような運用になるおそれがあります。それ以前に、能力考課は考課者の主観により評価される要素が大きいものであることを知る必要があります。
考課者訓練が行き届き、全考課者が基準に基づき客観的かつ公正に到達度評価を行うと仮定した場合、本来であれば、全職員の評価は絶対値ですから全体としても絶対評価が可能であるということになります。
次に分布率について考えます。国に準じた場合、査定昇給には分布率の設定がされることになります。分布率を設定する時点で、評価は相対評価になります。なぜなら、プラス査定対象者が分布率に従い正規分布になるとは限らないからであり、また、同じ評価点数であっても、分布率の枠から外れる職員がありえるからです。
平成20年7月10日に開催された「地方公共団体における人事評価の活用等に関する研究会(第2回)」においても、「絶対評価と相対評価について」として次のような議論がされています。
研究会における以上の論点は、給与構造改革による人事院規則の改正の際、既に検討されていることであると理解していました。なぜなら、査定昇給が予め定められた号給の枠の範囲内で行われることが規定されているからです。
どのような目的で成果主義賃金制度を導入するにせよ、プラス査定よりもマイナス査定において、その基準の明確化や公正性の担保の確立を優先すべきですが、多くの自治体ではプラス査定にしか配慮していないようです。
この原因は、昇給においては、プラス査定の方が心情的にも運用し易いからということのほか、国の査定昇給の運用が、特別昇給の時代のそれを踏襲していることが考えられます。
賞与査定においては、相対評価によるマイナス査定が行われている自治体もあります。
この理由は、賞与原資の規定からプラス査定原資の確保の必要上、マイナス査定者の原資をプラス査定に流用していることが考えられます。この点、国の運用は、標準の場合の賞与月数を全員下げることにより実現していますが、これは全員がマイナス査定された状態を標準とされていることになり、組合との交渉が必要となります。
人事考課の結果を用いて職員間で差をつけることの難しさとその原因については、次の参考文献をご覧ください。
(参考)
松繁寿和・梅崎修・中嶋哲夫「人事評価の決定過程(PDF)」(2002/6/14)
人事評価で絶対評価をする場合においては、その公正性や納得性を担保するため、認定評価を行うことは考えられません。あくまで到達度評価を行うべきです。これは目標管理において明らかです。
しかし、能力考課においては、コンピテンシー以外の方法では認定評価のような運用になるおそれがあります。それ以前に、能力考課は考課者の主観により評価される要素が大きいものであることを知る必要があります。
考課者訓練が行き届き、全考課者が基準に基づき客観的かつ公正に到達度評価を行うと仮定した場合、本来であれば、全職員の評価は絶対値ですから全体としても絶対評価が可能であるということになります。
次に分布率について考えます。国に準じた場合、査定昇給には分布率の設定がされることになります。分布率を設定する時点で、評価は相対評価になります。なぜなら、プラス査定対象者が分布率に従い正規分布になるとは限らないからであり、また、同じ評価点数であっても、分布率の枠から外れる職員がありえるからです。
平成20年7月10日に開催された「地方公共団体における人事評価の活用等に関する研究会(第2回)」においても、「絶対評価と相対評価について」として次のような議論がされています。
○ 絶対評価結果と相対評価結果の違いについて職員の理解を得るには、絶対評価に基づく人事評価結果に対し、任用や給与など反映させる処遇内容に応じた相対処理を行うという考え方が必要ではないか。
これは論理的に当然のことです。これは、研究会の次の論点に表現されています。○ 査定昇給や勤勉手当への反映を考慮すると、実務上、絶対評価だけでは無理。相対分布を視野に入れた運用をせざるを得ないのではないか。
研究会における以上の論点は、給与構造改革による人事院規則の改正の際、既に検討されていることであると理解していました。なぜなら、査定昇給が予め定められた号給の枠の範囲内で行われることが規定されているからです。
人事院規則9―8(初任給、昇格、昇給等の基準)
第37条
4 各府省において、前三項の規定により昇給区分を決定する職員の総数に占めるA又はBの昇給区分に決定する職員の数の割合は、人事院の定める割合におおむね合致していなければならない。
9 一の昇給日において第一項の規定により昇給区分をA又はBに決定する職員の昇給の号俸数の合計は、各府省の職員の定員、第四項の人事院の定める割合等を考慮して各府省ごとに人事院の定める号俸数を超えてはならない。
第37条
4 各府省において、前三項の規定により昇給区分を決定する職員の総数に占めるA又はBの昇給区分に決定する職員の数の割合は、人事院の定める割合におおむね合致していなければならない。
9 一の昇給日において第一項の規定により昇給区分をA又はBに決定する職員の昇給の号俸数の合計は、各府省の職員の定員、第四項の人事院の定める割合等を考慮して各府省ごとに人事院の定める号俸数を超えてはならない。
どのような目的で成果主義賃金制度を導入するにせよ、プラス査定よりもマイナス査定において、その基準の明確化や公正性の担保の確立を優先すべきですが、多くの自治体ではプラス査定にしか配慮していないようです。
この原因は、昇給においては、プラス査定の方が心情的にも運用し易いからということのほか、国の査定昇給の運用が、特別昇給の時代のそれを踏襲していることが考えられます。
賞与査定においては、相対評価によるマイナス査定が行われている自治体もあります。
この理由は、賞与原資の規定からプラス査定原資の確保の必要上、マイナス査定者の原資をプラス査定に流用していることが考えられます。この点、国の運用は、標準の場合の賞与月数を全員下げることにより実現していますが、これは全員がマイナス査定された状態を標準とされていることになり、組合との交渉が必要となります。
人事考課の結果を用いて職員間で差をつけることの難しさとその原因については、次の参考文献をご覧ください。
(参考)
松繁寿和・梅崎修・中嶋哲夫「人事評価の決定過程(PDF)」(2002/6/14)
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