人事異動と経営理念
2008-08-25(Mon)

イギリス列車の旅 車窓から by 曽野田欣也
人事管理とは、従業員がその労働から最大の満足感を得ると同時に企業に対し最大の貢献をなさしめるごとく、その潜在能力を育成発展さす方法である。それは一つの"ものの見方"であり、またさまざまな技法でもある」
(Pigors & Myers「Personnel Administration」。武沢信一訳「人事管理」昭和36年)
(Pigors & Myers「Personnel Administration」。武沢信一訳「人事管理」昭和36年)
人事管理が人的資源管理と呼ばれるようになっても、その理念は変わりません。
上に挙げた定義で「ものの見方」とは、経営者の経営理念や経営哲学といわれる価値観でしょう。すべてはこのパースペクティブを通して見て判断されることになります。
経営者は構成員に対して、その経営哲学を伝達する必要があります。その手法は、庁内報のような機関紙のほか、定例的な訓話の庁内放送などいろいろなものが考えられます。
様々な手法の中で一番有効な手段は、「人事異動」です。それが定期的あるいは不定期であれ、人事異動の個々の配置や昇進が、組織構成員に対して経営者の方針を如実に示します。
過日問題となった防衛省の守屋前事務次官は、人事においても豪腕を振るったそうですが、彼の理念である組織の私物化のために、自分の悪事を見過ごしたり幇助する人間を重用するような人事となるのは当然のことといえるでしょう。
ここまで行くと人事の失敗や組織の私物化の例というより、もはや犯罪ですが、トップの不適切な経営理念と人事施策により組織構成員のモチベーションとモラルを下げる例であるとも言えます。
大企業や役所では、今でも終身雇用制が堅持されています。そこでは、職に対する必要な人は内部調達される閉鎖システムを構成することになります。
こうした閉鎖システムの中では、組織構成員のキャリア形成に本人の意思はほとんど関係なく、人事課がその重要な部分を決定するため、配置と昇進といった人事異動は、職員の意識に対して最も影響を与えるものであるということが言えます。
(参考文献)
浜野美雄「配置・昇進」(帝国地方行政学会)
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