職務経験の蓄積のため
2008-08-28(Thu)
My second visit - Escomb Church in Co. Durham7世紀、サクソン人によって建てられた今でも現役の教会です。 人事異動の根拠となる2番目は、これです。
職務経験の蓄積のため
人事異動は、個々の職務の知識や技能の修得のために行われます。この知識等の習得のための異動も職員の勤続年数により、その意図が異なります。一般的に新卒の新規採用職員の採用後の10年間を「
教育異動期間」と呼び、部局をまたぐ異動が計画されます。
このいわゆる教育異動期間における
ジョブ・ローテーションは、県のように大規模な組織では徹底的に行われ、一般的には当該期間中に部局を異にする3部署を経験するのが好ましいとされています。また、この広範囲な職務間の頻繁な異動はゼネラリストの幹部養成手法としても広く知られているところです。
教育異動期間後は、当該職員の適性等を判断した結果としての異動となり、教育異動期間における異動よりも一般的には在課期間は長めになると言われています。この期間は、係長などの中間管理職になるまで続きます。
係長などのポストに就くと異動サイクルは、再び短期化するのが好ましいと言われていますが、ポストに就くと数の制約もありセオリーどおりにはいきません。
しかし、課長などの管理職に昇進すると、異動サイクルは1~2年と極端に短くなります。これは、管理職が実務から極めて距離ができることの裏返しとして、当該職務の権限を握ることから、異動をさせ易くなる面と短期で異動をさせなければならないニーズが合致することによります。
こうしたジョブ・ローテーションによるゼネラリスト育成は、一般的な支持を得ていますが、その弊害も指摘されています。
その一つとして挙げられるのは、職員が各部署において職務の表面的なことしか捉えないようになり、配置先で修得すべき職務知識や期待されるような職務経験の蓄積に至らない、ということが挙げられます。こういう職員は、頻繁な異動により、自分が幹部候補生であることの自覚を持ちますが、そういう意識が返って職員を夜郎自大にしてしまったと言えるでしょう。そういう素材は、そもそも幹部としての資質に欠けます。
また、これと対となる弊害は、幹部候補でない職員で、異動サイクルが相対的に長い職員のモチベーションが著しく低下するということが挙げられます。
このような弊害を避けるためには、教育異動期間における「10年3部署」といった異動ルールを徹底して守ることでしょう。そして、その異動部署も一部の部門に偏ることなく、多様な部門を経験させることとし、その部門の組み合わせも多様とすることです。
若手職員は、学生時代の部活の経験等により「集団で仕事」をすることは知っています。しかし、それとはまた異なる「組織で仕事」をするということを理解するために、教育異動期間中に総務、人事、財政、企画といった管理部門を経験すべきであると考えます。
(参考文献)
浜野美雄「
配置・昇進」(帝国地方行政学会)
掛川市例規集「
掛川市職員の配属及び異動の基準に関する規程」
静岡県「
静岡県キャリアデベロップメントプログラム」
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コメント
久しぶりにコメントさせていただきます。
公務員人事関係で、日豪の比較で感じることは主に2点です。
1 豪の公務員人事のフレキシビリティの高さ
(終身雇用ではなく、ポスト雇用)
2 豪の幹部公務員の専門能力の高さ
OECDによれば、オーストラリアと日本は、先進国の中でも、(国家)公務員の人事システムが対極にあるということです。日本は「Career(終身雇用)」、オーストラリアは、「Position-base(ポスト雇用)」です。
統計を引くまでもなく、新聞等を日々見る中でもそれは明らかで、新聞には毎日、市・州・連邦各レベルの公務員の採用情報が、「○○のポスト、年収●●~」という形で掲載されています。実際に、クラスメートでも政府間を渡り歩く職員は多いです。連邦→州、A市→州→B市等です。
その運用に与える効果ですが、正直言って、上級公務員の専門性は怖ろしいほど高いものがあります。修士号は当然として、博士号を持っている職員も多いです。一人の上級公務員が書いた論文や報告書で、国際的な学問的検証に耐えうる水準にあるものが多々あります。残念ながら日本の公務員の書いたものでそういったものはいまだに見ておりません。私の教員でも、元公務員・議員で、きちんと博士課程を修了し、学問的業績を上げた上で博士号を修得した者が多数おります。
その一方で、連邦政府の本当の幹部職員(日本でいえば指定職クラス)は「高級公務員」として、各省庁から離れた存在として、ポストを大きく動かされる、まさに「ゼネラリスト」である幹部公務員として処遇されています。
どちらの制度がより優れているか…簡単に答えは出せません。中・下級公務員の意欲・能力・倫理等は明らかに日本がすぐれていると感じるからです。ただ、現在の豪州のようなダイナミズムをもった公務員は、日本のような省庁・自治体クローズで「ゼネラリスト養成」を続けている政府からは、永遠に生まれないのではないかと考え込んでしまいます。
一方、またまたOECDによればですが、終身雇用型からポスト雇用型への抜本的改革に成功した国は少ないということです。これまでの個々の国の状況を踏まえた上で改革をすることとなるでしょうが、日本の場合、幹部クラスの公務員があまりに閉鎖的・低専門性である問題をどう解決していけるだろうか?と悩みます。基本は各職位レベルでの外部登用を積極化していくしかないのかなあとは思っていますが、職務記述書もない、また外部労働市場もほぼ存在しない日本でそれが可能なのか?とますます困ってしまいます。
かなり論点がずれてしまいましたが、「人事異動」が重大問題になるのは、日本の各政府が終身雇用型であるためであると思い書かせていただきました。長々とすみませんでした。
> Melburnian様
> 「人事異動」が重大問題になるのは、日本の各政府が終身雇用型であるため
記事本文を凌駕するコメントを頂き恐縮しております。
ご指摘のとおり、欧米のように労働市場が社会全体でOpenとなっている場合、組織における人事課は、日本ほどの組織権力を持たないですね。人事より財政部門が力を持つはずです。
私もイギリスで就職活動をしようとした時には、「HR Manager求む、essentialな資格は、○○で、給料は年間○○」といった広告をよく見ました。
労働力市場をオープンシステムにするには、求人方法だけでなく少なくとも職能組織全体を大きく変えなければなりませんから、日本ではほぼ不可能であると考えます。
その中で各自治体でできることの一つは、任期付職員の活用ではないかと思います。
総務省では公務員の短時間勤務に関する研究会が開催され、その中でも議論されていますが、任期付職員がキャリアとして有用で魅力的なものであり、任期付職員としての待遇も報酬面で恵まれたものでないといけないと思います。
今の任期付職員制度では、優秀な人はたとえ数年の短期間であっても、官庁へはなかなか来てくれません。
知人のアメリカ留学経験のある弁護士が任期付職員として某中央官庁で勤務しましたが、もう1年と乞われたのにもかかわらず1年で辞めて弁護士業に戻りました。
話は変わりますが、近いうちにこの弁護士やM研究員と一緒にリアルで政策論議をしましょう。
> 労働力市場をオープンシステムにするには、求人方法だけでなく少なくとも職能組織全体を大きく変えなければなりませんから、日本ではほぼ不可能であると考えます。
おっしゃる通りかと思います。ただ、私としては、任期付き職員の活用に加えて、できることならばせめて「自治体間疑似労働市場」でもできたら面白いのになあ、と妄想しています。本来であれば、自治体間では業務の共通性が高いので、できたら面白いだろうなあ・・・とA市で予算係長の後、B県で財政係長・・・とか面白いと思うんですけどね~妄想ですね。
こんばんは。
ちょくちょくROMさせて頂いております
さて、「教育異動期間」とありますが・・
19歳で初級行政職入庁、それから15年、ずっと県税畑
(税事務所5カ所、本庁税務課2回)のような私は
人事政策上「異端」なのでしょうか・・・
> Melburnian様
> 自治体間疑似労働市場
実は、私もそれは妄想します。
夢のようですが、実現したら、素晴らしいですね。
実現しない理由は、自治体で幹部候補生はゼネラリストとして養成されるといっても、その実態は「当該組織内限定のゼネラリスト」であって、行政組織一般における管理者としての奥行きはないからではないでしょうか。
国のキャリアの場合でも、若い頃から幹部エリートとして培養されていても民間では関係業界への天下りとして紐付きでなければ、民間からの引く手もあまりないのではないでしょうか。
国であろうが、自治体であろうが、有能な人はいますから、そういう人には、セカンドキャリアを早々に始められている方もいらっしゃいます。
自治体間異動システムがあっても、そういう人材は組織が離さないでしょうね。
それができたと一般的に成立したと仮定すると、限定的な職域ではあるがOpenな労働力市場ができますネ。
それと共に、幹部公務員の専門性や管理能力も欧米のように向上するだろうと思います。
その結果、公共の福祉の向上が図られますから。
> 県税職員様
> 「異端」なのでしょうか・・・
異端ではないと思います。
教育異動期間から異動サイクルを限定するかしないかは、人事当局の育成計画によります。
県税職員様の場合は、税務専門職としての育成計画の対象になっていらっしゃるのではないでしょうか。
曽野田様
お返事有り難うございます
・・たしかに税務というのは、「予算を執行する」他部局
とは逆の「(自主)財源を確保する」業務なわけで
専門性が問われる職場ではあるとおもいます。
まあ、酒の席で上司にこんなことをいわれたことも
ありますね。
「プロパー 経験者 初心者が1/3づついて税務を回す
だからおまえはプロパーになれ。」
我が県はつい三十数年前は「政府」と名乗っておりまして
(バレバレですね)
税務職員は「主税局」所属だったのです。
その名残で団塊の世代、まさに昨年今年と
税務専門職で採用された人たちがリタイヤしていきます
そういう大先輩にこの15年ともに業務曽遂行してきた
ことは非常に貴重であり、これからもそれを生かして
いきたいなとは思っております。
> 県税職員様
県税職員様は、酒の席での上司の方をはじめ、配属先で良き先輩がたにめぐまれたようですね。
先輩から得た知識や自分の経験から得た知恵を若手に伝えていくのは責任重大です。
実は、私は、大学卒業後の短い間ですが、那覇市小禄に住んでいました。
沖縄は私の思い出の場所で、いつか連れて行ってあげる、と妻には交際時代から話しています。
いまだに連れて行ってあげてないですが。(笑
そうですか・・・
どのくらい前のことでしょうか>お住まいの頃
もしそれ以来沖縄に来ていないなら
だいぶ小禄の風景も変わったと思います
今は小禄にはジャスコもモノレール駅もありますよ
ぜひ奥様を連れてお越し下さい。
これからもROMさせていただきます。
お相手頂き
ありがとうございました
> 県税職員様
私が小禄に住んでいたのは、今から21年前のことです。
小禄もずいぶんと変わったようですね。
沖縄へ妻を連れて行けるのは、いつになるやら。
これからも気軽にROM&コメントをしてください。
よろしくお願いいたします。
> 実現しない理由は、自治体で幹部候補生はゼネラリストとして養成されるといっても、その実態は「当該組織内限定のゼネラリスト」であって、行政組織一般における管理者としての奥行きはないからではないでしょうか。
仰るとおりですね…。せっかくの経験が、積極的な「学習」を通じて、抽象化されたものとして一般化・普遍化されていないのではないでしょうか。それがしっかりとなされていれば、幹部になるために必要な期間は大幅な短縮が可能ですし、またある程度の慣らし運転期間さえ取れれば、どこの自治体でも通用するはずですよね。自分がそうなれるかどうかは・・・今後の精進にかかっていますが。