職員の意向に応じるため
2008-09-07(Sun)

10年前 -- 下の娘 by 曽野田欣也
人事異動は、次の理由によっても行われます。
職員の意向に応じるため
サラリーマンは、「辞令書一枚でどこへでも行き、どんな仕事でもやらなければならない」といわれています。それは人事異動の一面を言いえて妙ですが、すべてではありません。長期雇用を前提とした内部調達方式の人事の場合、人事権は組織の強力な権限ではありますが、そこで働く人間の「意向」を無視しては成り立たないことも事実です。
それでは、職員はどのような理由により、異動申告をするのでしょうか。
まず、考えられるのが、これです。
職場の人たちとうまく行かないから
長年同じ部署にいると、異動したくなるもので、かと言って、行きたい部署もない場合は、異動意向も強くはありませんが、同じ職場の上司や先輩などとうまく行かない場合は、異動意向は非常に強くなるものです。
職場の人たちとうまく行かないことを理由とする異動意向は、ワガママなようですが、人事課も耳を傾けるべき理由であると考えます。なぜなら、こうした人間関係により、職員のモラルが低下するのは当然であり、最近ではメンタルヘルスの問題が管理者の責務として非常に重要なものであると捉えられているからです。
こうした意向は、「自己申告書」等の制度で職員が申し出のし易い環境を整備しておく必要があるでしょう。もちろん、人事担当課は、こうした申し出に対して盲目的に従うべきではありません。すべての異動要因に関する情報の扱いと同様に、こうした人間関係の不和も情報であり、その情報には「検証」が必要です。また、こうした意向を人事に伝える側としては、その情報に責任を持つ必要があるでしょう。なぜなら、本人は一過性の人間関係のつもりであっても、その情報は人事情報として蓄積されるからです。単なるワガママと判断された場合は、当該情報提供者は、人事担当課の信頼を失うことになります。
次に考えられるのが、これです。
自分のキャリア形成のため
長期雇用で一つの自治体で退職まで勤め上げる場合、公務員のキャリア形成として、「どこの部署に配属されたか」や「どのような仕事に携わったか」ということが重要になります。個々の職員は、自分の適性と関心に基づき、行ってみたい部署ややってみたい仕事を求めて、配置を希望することができます。キャリア形成面でのこうした積極的な異動意向は、人事担当課としても誠実に受け止めないといけません。この場合においても、人事考課その他の人事関係資料を参考にして慎重に検討することになります。
最近は少なくなって来ていると思いますが、最後に考えれらるのが、これです。
昇進のため
先にも触れましたが、組織においてすべての職員に平等に昇進機会の与えられている組織はないといえます。上昇志向のある職員は、各組織において「エリートコース」と呼ばれているものに乗りたいと考えるでしょう。そして、そのコースとは何か、と問えば、昇進機会の多いと噂される部署へ配置されることを望むのが人情です。このような異動意向は分かりやすくて良いです。
以上見てきたとおり、配置は様々な必要に応じて、その必要の生じた事情や要因を様々な角度から検証した上で検討され、実行されるか、あるいは実行されないかが決まります。したがって、一部の部署を一部の人材で独占状態にするのは、組織的に健全ではありません。
また、配置の「人材育成」の面からは、昇進機会に関係なく、あらゆる部署への配置を考える必要があります。個人のキャリア形成は重要であり、モチベーション管理のためにもこれは優先順位の高いものですが、人事を考える上で、個人の必要よりも、組織の必要が常に優先されるものであることは言うまでもありません。そして、組織は組織の必要を個人に説明する機会を持つよう努力する必要があるでしょう。
なお、職員の意向は、必ずしも一つの理由や要因に基づくものではなく、複数の事情によって一つの意向として表れる場合も多々ありますから単純ではありません。繰り返しになりますが、いずれの場合においても、職員の意向も他のすべての情報同様に、多面的に分析、検討して結果を出します。
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