人事異動は本当に恣意的か
2008-11-14(Fri)
総務省の地方公務員の短時間勤務の在り方に関する研究会の委員をされている西村美香教授は、ご自身の論文の中で、職務分析について、次のように述べられています。
これは、『「職」と「人」の理解』について考えたときに、私も不満を覚えたところです。というのも、これまでの役所では十分な職務分析がされておらず、その結果、人事評価は人物評価となり、職に必要とされる職務遂行能力や個人の適性などが科学的に検証されていないからです。
改正地方公務員法では、職階制を放棄し、人事評価を新たに規定しています。立法上はそれで良いでしょう。しかし、職務分析とその職務を遂行する上で必要とされる能力などが明確にならずして、果たして適正な人事評価が行えるのか、というのが私の疑問です。職員が能動的に自らのキャリア形成について考えようとしても、ゼネラリストを中心とした公務員は、能力開発の目標が立てられないのではないでしょうか。
以前、私は「昇格選考のフィルター 3」で次のように述べました。
この仮説を立てるのも、また、それを検証するにしても、人事担当者個人の職務経験等だけによるとすれば、客観性や妥当性という点で、現代的な価値を付与する必要はあるのではないでしょうか。仮説について人的資源管理の研究を参考にする担当者もいれば、歴代人事課長相伝としている組織もあるかもしれません。しかし、人事はそのような属人的なものでも職人芸でもなく、ただ単に合理的なものであるべきです。
人事が恣意的だ、と回りから捉えられる要因は、科学的な「職」の理解、つまり職務分析が行われておらず、こうした人事担当者の力量に任されている日本型人事に内在するものなのではないでしょうか。もちろん、職務分析が科学的にされて「職」の理解が進んだとしても、「人」の理解が個人的に行われるのでは問題は解決しません。「人」の理解のためには、人事考課制度を活用することが考えられます。人事考課がこの役割を果たすためには、今とは異なる内容の考課者研修が必要となります。
また、研修ではありませんが、所属長には部下の能力や適性等の評価を人事考課票に記入させるだけではなく、人事課長との面接により、資料を用い口頭で説明させるのも一法です。その際、説明する相手は人事課長ではなく、外部に委託した人事コンサルタントでも構いません。各所属長は、この面接を通じて自分自身の説明能力のほか管理者としての各種能力を測定されることになります。
話は逸れますが、職務分析の結果として、終身雇用を前提とし長期雇用の中で能力を開発、向上させていく必要のある職ばかりではないのではないか、ということが言えます。これを認めれば、常勤の職が普通であると捉える必要はなくなります。そうした職には、常勤の職とは異なる給与・人事制度により運用したほうが合理的です。任期付短時間勤務職員制度を導入するまでもなく、職の科学的分析を行い、任用の多様性を認めて地方公務員法の整備をすれば、現在の非常勤職員制度にある給与面や雇用面での課題も解決されるのではないでしょうか。
職務とポストを一体的に捉える「官職」概念から距離を置いて従来よりも詳細な職務分析を行い、職務遂行に必要な資格や能力を特定し、その分類を体系的にまとめた新しい人事管理の基盤を確立しなければならない
「都市問題」第95巻 第12号(2004年12月号)
「地方公務員制度のおける任用の多様化・弾力化の限界」から引用
「都市問題」第95巻 第12号(2004年12月号)
「地方公務員制度のおける任用の多様化・弾力化の限界」から引用
これは、『「職」と「人」の理解』について考えたときに、私も不満を覚えたところです。というのも、これまでの役所では十分な職務分析がされておらず、その結果、人事評価は人物評価となり、職に必要とされる職務遂行能力や個人の適性などが科学的に検証されていないからです。
改正地方公務員法では、職階制を放棄し、人事評価を新たに規定しています。立法上はそれで良いでしょう。しかし、職務分析とその職務を遂行する上で必要とされる能力などが明確にならずして、果たして適正な人事評価が行えるのか、というのが私の疑問です。職員が能動的に自らのキャリア形成について考えようとしても、ゼネラリストを中心とした公務員は、能力開発の目標が立てられないのではないでしょうか。
以前、私は「昇格選考のフィルター 3」で次のように述べました。
人事課へ配属された職員は、最初は「職」の理解から始め、最終的には自分なりのこうした仮説を持つようになります
この仮説を立てるのも、また、それを検証するにしても、人事担当者個人の職務経験等だけによるとすれば、客観性や妥当性という点で、現代的な価値を付与する必要はあるのではないでしょうか。仮説について人的資源管理の研究を参考にする担当者もいれば、歴代人事課長相伝としている組織もあるかもしれません。しかし、人事はそのような属人的なものでも職人芸でもなく、ただ単に合理的なものであるべきです。
人事が恣意的だ、と回りから捉えられる要因は、科学的な「職」の理解、つまり職務分析が行われておらず、こうした人事担当者の力量に任されている日本型人事に内在するものなのではないでしょうか。もちろん、職務分析が科学的にされて「職」の理解が進んだとしても、「人」の理解が個人的に行われるのでは問題は解決しません。「人」の理解のためには、人事考課制度を活用することが考えられます。人事考課がこの役割を果たすためには、今とは異なる内容の考課者研修が必要となります。
また、研修ではありませんが、所属長には部下の能力や適性等の評価を人事考課票に記入させるだけではなく、人事課長との面接により、資料を用い口頭で説明させるのも一法です。その際、説明する相手は人事課長ではなく、外部に委託した人事コンサルタントでも構いません。各所属長は、この面接を通じて自分自身の説明能力のほか管理者としての各種能力を測定されることになります。
話は逸れますが、職務分析の結果として、終身雇用を前提とし長期雇用の中で能力を開発、向上させていく必要のある職ばかりではないのではないか、ということが言えます。これを認めれば、常勤の職が普通であると捉える必要はなくなります。そうした職には、常勤の職とは異なる給与・人事制度により運用したほうが合理的です。任期付短時間勤務職員制度を導入するまでもなく、職の科学的分析を行い、任用の多様性を認めて地方公務員法の整備をすれば、現在の非常勤職員制度にある給与面や雇用面での課題も解決されるのではないでしょうか。
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