書籍「自治体の給与・人事戦略」
2009-02-02(Mon)

写真は「イングランド 写真の日々」から「バレンタイン」 by ukphotography
年明けからは、時々更新が滞ります by 曽野田欣也
kei-zu様に教えて頂いた「自治体の給与・人事戦略」に目を通してみました。
「自治体給与人事研究会」の編著ということだったので、その研究会とは何ぞやと思っていたら、総務省のプロジェクトチームのようです。章別の執筆者たちはすべて総務省職員です。
本の目次は、
序章 今後の地方公務員給与を考える基本的視点について
第1章 「地方行革と集中改革プラン」について
第2章 地方公務員給与の適正化
第3章 給与構造改革の概要と公務員法改正案について
第4章 退職手当制度の改正について
第5章 総人件費改革と新たな定員適正化の取組み
第6章 新たな人事評価システム
終章 人事制度の改革
となっています。第1章 「地方行革と集中改革プラン」について
第2章 地方公務員給与の適正化
第3章 給与構造改革の概要と公務員法改正案について
第4章 退職手当制度の改正について
第5章 総人件費改革と新たな定員適正化の取組み
第6章 新たな人事評価システム
終章 人事制度の改革
給与構造改革や定員適正化、そして人事考課制度に取り組んできた自治体の人事担当者にとっては、特に目新しい内容はないのですが、第6章と終章では、私も関心のある問題に触れられています。
まず、第6章「新たな人事評価システム」の「2 若干の基礎知識」の「(1)人と仕事」では、文字通りの人事に関する基礎知識に触れられています。あくまで人事評価の面から記述されている内容ですが、「人と仕事」について他の面から捉えると、職務分析と人の適性の把握ということになります。まずは、職務分析について今まで以上に科学的な分析が必要であると私は考えています。配置や人事評価の前提となるのが職務分析と人の理解です。その意味で「人と仕事」、言い換えれば、「職と人」の理解は人事制度とそれに連携した給与制度を考える上でエッセンシャルです。
次に、「終章 人事制度の改革」は、短いながらも最も読み応えのある内容でした。「(3)上級幹部の処遇」中「上級幹部職員群の創設」については、現在の級別定数管理の緩い職能制と何ら変わらないものになる虞もあると思います。しかし、それが避けられるのであれば、人材活用と早期退職慣行の是正の観点から、今後十分検討する価値があろうかと思います。また個人的には筆者の提言する職員群が、専門スタッフ職と何らかの関係があるのかないのかについて、もう少し詳しい構想を知りたいと感じます。
私が最も感動したのは、「4 給与制度の将来」の中でのいくつかの提言です。その中では、私が匿名時代のブログで指摘した査定昇給におけるプラス査定の効果に関する問題のほか、本ブログの「人事異動は本当に恣意的か」や「短時間研の報告書」で問題提起した常勤と非常勤の問題について、私の拙い文章とは異なる明確な論理で語られていることです。現役の総務省の官僚からこうした大胆な提言がなされるということは、ある種の感動さえ覚えます。興味のある方は、ご一読ください。
なお、査定昇給におけるプラス査定の効果に関する問題については、経営コンサルタントの方と議論したことがあります。このコンサルタントは、これを「別に問題ではない」と言っていましたが、この人は公務員の給与制度をよくご存知でないか、査定昇給を「給与原資の適正配分」の視点でしか捉えていないと思いました。賃金を衛生要因とする観点からも、これが合理的な資源配分であるとは私は考えません。また、査定昇給は、「給与構造改革」の結果とはいえ、その前の制度が未だ色濃く残っています。したがって、査定昇給の運用に関しては、今後、さらに緻密な制度設計をした上で規則改正が必要であると考えます。
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