裁判員日当 辞退を No.2
2009-05-18(Mon)

写真は「Plumerian cafe -365photo-」から
「夜の遊歩道」 by nanami
以前の「裁判員日当 辞退を」の記事で、読者のかたから、記事が「異常に簡単」だ、というご指摘を頂いたので、これについて、もう少し考えてみたいと思います。
まず、地方公務員が裁判員になる場合、何が問題になるのかを、人事屋の立場で考えてみます。
地方公務員法第24条第4項は、給与の二重支給を禁止しています。また、同法第38条第1項は、地方公務員は、報酬を得て、いかなる事業、事務に従事してはいけない、としています。ここで言う報酬とは給料、手当などの名称の如何を問わず、労務、労働の対価として支給あるいは給付されるものをいいます。
総務省は、平成20年5月30日付け総行公第49号の中で、「裁判員等に支給される日当については、地方公務員法第38条第1項に定める「報酬」には当たらないことから、営利企業等の従事制限の許可を受ける必要はない」としています。したがって、裁判員の日当を受け取ることは、地方公務員法第38条第1項には抵触しません。
また、裁判所のQ&Aを見ると、
裁判員や裁判員候補者等に支払われる日当は,裁判員等の職務に対する報酬ではなく,裁判員候補者等として裁判所にお越しいただくことや裁判員等の職務を行うに当たって生じる損害(例えば,裁判所に来るための諸雑費や一時保育料等の出費,収入の減少など)の一部を補償するものです
とされています。したがって、裁判員の日当を受け取ることは、給与の二重支給には該当しない、という結論になります。
これを制度設計の観点から考えてみましょう。
裁判員は、非常勤の国家公務員であり、地方公務員が裁判員となった場合、地方公務員が非常勤の国家公務員の身分を兼ねることになります。兼職の場合のセオリーとして、異なる職間における身分、命令系統、懲戒権など内部管理的な事項の調整を行います。これは、他自治体等へ職員を交流派遣する場合などに検討する事項です。
この場合、給与面でも二重支給とならないように調整が必要です。裁判員にその職務の対価を支払うこととする場合には、地方公務員が裁判員になった場合の報酬等の給付に係る調整をする必要が生じます。つまり、制度設計の面から考えると、「裁判員等に選任された地方公務員に対する日当の支給に関する特例」といった規定があっても良いと思います。この規定がないとすれば、その理由は、裁判員に支払う日当は、費用弁償的なものであり、職務に対する反対給付という性格のものだとは想定していなかったと推測されます。あるいは、現行法規上の解釈で、同じ帰結となるから、そうした特例の規定は不要と判断したかもしれません。
また、裁判員の日当が課税対象か、それとも非課税であるかは、税法上の問題です。日当が課税対象であれば報酬に該当する、とは一義的にはいえません。裁判員の日当に関しては、それが給与なのか実費弁償なのか、という点から判断すべきです。
最後に、裁判所のQ&Aを見ると、裁判員の日当は、段階的に定められた定額のようです。実費として経費のかかることもありますから、日当の全額を放棄する必要はないでしょう。だからと言って、受け取るべき日当から実費相当部分の額を除いた債権だけを放棄する、というのも実益にも乏しいのではないでしょうか。これは、日額旅費や旅費における日当の取扱いについても同じことがいえます。
以上の考察は法的な側面からのものですが、市民の目線から見てみましょう。
住民感情を考慮した場合、別の判断もできます。私もこれまでの業務で市民の皆さんと接した経験から申し上げれば、市民の皆さんは理屈では分かっても、感情的には納得できないということが多々あるように感じました。それは制度設計の段階で、いろいろな想定がうまく抽象化されていない、という立法上の不満であることを含みます。裁判員制度の是非はさておくとして、これが公民権の一種であることを勘案すれば、広く国民に同様な取扱いがされるべきであることには多くの理解が得られることを期待します。
裁判員制度 公務員は日当辞退せよ 福島県通知
2009年05月27日水曜日
私が株式会社の株主で、その会社の経営陣が裁判員となる社員に対して有給の特別休暇を与えることとしたと仮定した場合、裁判員の日当が報酬として支払われるものならば、無給の特別休暇としないことを経営陣に株主総会で問い質し、当該日当が謝金ということであれば、この有給の特別休暇を是とするでしょう。社員が裁判員として公民権を行使できることは良いことですし、このような社会参加により社員が私人として社会貢献することを企業として支援すべきであると考えるからです。
2009年05月27日水曜日
裁判員制度をめぐり、裁判員や裁判員候補者に支払われる日当について、福島県内では公務員の受け取り辞退を決める動きが広がっている。福島県が職員に辞退するよう通知し、二本松市は辞退を決定。会津若松市も辞退の方向で検討している。職員が選ばれた場合、有給の特別休暇で対応する方針のため、県民から「二重取り」と批判されることを警戒した。今のところ、東北の他の5県に同様の動きはなく、福島の対応が際立っている。
裁判員制度を前に、福島県は、出産や忌引などの際、取得が認められる有給の「特別休暇」に裁判員制度への参加も加えた。これを受けて昨年12月、支給される日当(上限1万円)の受け取りを辞退するよう職員に通知した。
日当について総務省は、例えば店主が選ばれた場合、店を休むことに伴う損害の一部を補償することを目的とし報酬ではないとの認識だ。公務員であっても受け取りは問題ないとの通知を出している。
しかし、福島県人事課は「特別休暇で参加する職員に損害は発生しない。県民から二重取りとの批判を招きかねない」と話す。居住地から裁判所までの距離に応じて支払われる旅費や宿泊費については「実費なので受領しても問題ない」(同課)という。
背景には1997年に全国的に問題になった公費不正支出への対応がある。福島県は98年11月以降、正当な理由があっても、講演や会議出席に対する謝礼の辞退を申し合わせている。裁判員日当もこれに準じた。
日当辞退は県内に波及し、二本松市は今月、同様の理由で職員に辞退を求めた。会津若松市は、今月中にも職員に通知する方針だ。
宮城県は「日当の受け取りや特別休暇の取得などは国と同じ扱いにした」と説明。受領は問題ないとの立場だ。他の4県にも目立った動きはない。
総務省は「日当は子どもの保育料など、あくまで裁判に参加するために生じた損害の一部を補てんするもの」と話し、辞退の動きが広がることを懸念している。
裁判員制度を前に、福島県は、出産や忌引などの際、取得が認められる有給の「特別休暇」に裁判員制度への参加も加えた。これを受けて昨年12月、支給される日当(上限1万円)の受け取りを辞退するよう職員に通知した。
日当について総務省は、例えば店主が選ばれた場合、店を休むことに伴う損害の一部を補償することを目的とし報酬ではないとの認識だ。公務員であっても受け取りは問題ないとの通知を出している。
しかし、福島県人事課は「特別休暇で参加する職員に損害は発生しない。県民から二重取りとの批判を招きかねない」と話す。居住地から裁判所までの距離に応じて支払われる旅費や宿泊費については「実費なので受領しても問題ない」(同課)という。
背景には1997年に全国的に問題になった公費不正支出への対応がある。福島県は98年11月以降、正当な理由があっても、講演や会議出席に対する謝礼の辞退を申し合わせている。裁判員日当もこれに準じた。
日当辞退は県内に波及し、二本松市は今月、同様の理由で職員に辞退を求めた。会津若松市は、今月中にも職員に通知する方針だ。
宮城県は「日当の受け取りや特別休暇の取得などは国と同じ扱いにした」と説明。受領は問題ないとの立場だ。他の4県にも目立った動きはない。
総務省は「日当は子どもの保育料など、あくまで裁判に参加するために生じた損害の一部を補てんするもの」と話し、辞退の動きが広がることを懸念している。
私が株式会社の株主で、その会社の経営陣が裁判員となる社員に対して有給の特別休暇を与えることとしたと仮定した場合、裁判員の日当が報酬として支払われるものならば、無給の特別休暇としないことを経営陣に株主総会で問い質し、当該日当が謝金ということであれば、この有給の特別休暇を是とするでしょう。社員が裁判員として公民権を行使できることは良いことですし、このような社会参加により社員が私人として社会貢献することを企業として支援すべきであると考えるからです。
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