部・課長級庁内公募へ 湯沢市
2009-10-04(Sun)
kei-zu様にご指名を受けたので、同氏の記事「部・課長級庁内公募へ 湯沢市」経由で、
部・課長級庁内公募へ 湯沢市
読売新聞 2009/9/29
成果主義は、人件費原資の成果に応じた合理的な配分を名目に、実質的には人件費削減策として運用されました。その結果、「成果主義」はがんばっても報われない制度として、民間企業の労働者の信頼を失いました。その反省として、また、これまでの人事課主導の人事異動や科学的管理法的な人事制度を見直し、職員のやる気やコミットメントを引き出す新たな人事制度の導入が言われるようになって久しくなります。新聞記事の例もこうした取り組みの一環です。
要は、今では働く人が成果を挙げるのを支援する仕組みの導入とその効果的な運用方法が試行錯誤されています。ただ単に、企業経営のトレンドばかりを追い、競争優位にある優良企業のベストプラクティスを模倣しているだけでは意味がありません。こうした企業経営における人的資源管理の流れを知らない組織においては、成果主義的賃金制度を導入したまま、記事のような公募制を併せて採用するという非論理的な人事制度の運用をしています。もちろん、各社毎に環境は異なりますから、成果主義的賃金制度と公募制を併せて導入しているが、その運用は相互に効果的な場合もありますから、以上の一般的な考えが成り立たない組織もあるでしょう。大事なのは、その組織で働く人たちに、当該人事制度を運用する経営側の理念が伝わっているかどうか、ということです。
成果主義などは、金銭給付という衛生要因により働く人のモチベーションを上げようとしました。これは外発的動機付けの方法です。一方、働く人がやりたいことをやらせる、という手法は内発的動機付けと言えます。言い換えれば、働く人の側にとって主体的な動機付けです。
自己申告書により人事異動の意向を人事課に対して表明することができますが、これは人事課がどれだけ当該職員の意向を汲み取るか次第という一面があります。しかし、公募制は、働く人のキャリア形成に対する自主性を大幅に認めるものと言えるでしょう。
公募制というベスト・プラクティスを導入するのは容易です。しかし、この制度により求める成果を挙げる難しさは、やりたい人が素直に手を挙げられるような組織環境があるかどうかや、そもそも職員にキャリア意識があるかどうかにあります。役所の部署には、一般的に「陽の当たる部署」と「陽の当たらない部署」や「人気のある部署」や「人気のない部署」があるとされています。「陽の当たる部署」への異動やポストに手を挙げると、回りの職員の目が気になって手が挙げられないものです。また、自らのキャリアについて考える人たちも、「キャリアは、人事課から与えられるもの」という意識があり、それを他人に知られたくない、ということもあるようです。そういう場合は、職員の意識改革が必須です。そして、この「職員の意識改革」こそ最も難しい課題の一つであり、難しいからこそ、自分のキャリア形成の一部として、私は取り組みたいと考えます。
確かに難しいことだとは思いますが、日本的志向から考えると、手を挙げにくいことに、最初に手を挙げると変人扱いされますが、それにデメリットがなく、少々のメリットはあることが分かると、パラパラと手が挙がるようになるのではないかと思います。
下の挙げた参考文献のうち、元群馬県職員の多田稔氏による「公務員の意識改革-組織文化の観点から(PDF)」は特にお勧めです。
(参考文献)
「社内公募・FA制度事例集―自律人材を活かす11社の仕組み」(日本経団連出版)
柏尾眞津子「外発的動機づけと内発的動機づけ(PDF)」(大阪人間科学大学)
滋賀県「職員の意識改革を徹底する(PDF)」
多田稔「公務員意識改革のブレイクスルー(PDF)」
多田稔「公務員の意識改革-組織文化の観点から(PDF)」
産労総合研究所「ホワイトカラーのキャリア開発支援に関する調査(PDF)」(2007/10)
部・課長級庁内公募へ 湯沢市
読売新聞 2009/9/29
斉藤光喜・湯沢市長は28日の定例記者会見で、部長級と課長級の全ポストについて、庁内からの公募で決める方針を明らかにした。結果は、来春の人事異動に反映させる。斉藤市長は「年功序列の殻を破り、職員のやる気を高めたい」と趣旨を説明した。
市総務課によると、対象となるポストは39。斉藤市長は「できるだけ多くのポストを公募で決め、少なくとも3~4年は務めてもらうつもり」と述べた。
市は既に、10月から新設する「美(うるわ)しの郷ゆざわ産業振興部」の部長を庁内から公募したが、応募はゼロだったという。ある幹部は、「注目が集まることで、手を挙げることをちゅうちょしたのでは」と明かすが、民間出身の斉藤市長は「失敗してもやる気がある方が良い」と、意に介さない様子だった。
市総務課によると、対象となるポストは39。斉藤市長は「できるだけ多くのポストを公募で決め、少なくとも3~4年は務めてもらうつもり」と述べた。
市は既に、10月から新設する「美(うるわ)しの郷ゆざわ産業振興部」の部長を庁内から公募したが、応募はゼロだったという。ある幹部は、「注目が集まることで、手を挙げることをちゅうちょしたのでは」と明かすが、民間出身の斉藤市長は「失敗してもやる気がある方が良い」と、意に介さない様子だった。
成果主義は、人件費原資の成果に応じた合理的な配分を名目に、実質的には人件費削減策として運用されました。その結果、「成果主義」はがんばっても報われない制度として、民間企業の労働者の信頼を失いました。その反省として、また、これまでの人事課主導の人事異動や科学的管理法的な人事制度を見直し、職員のやる気やコミットメントを引き出す新たな人事制度の導入が言われるようになって久しくなります。新聞記事の例もこうした取り組みの一環です。
要は、今では働く人が成果を挙げるのを支援する仕組みの導入とその効果的な運用方法が試行錯誤されています。ただ単に、企業経営のトレンドばかりを追い、競争優位にある優良企業のベストプラクティスを模倣しているだけでは意味がありません。こうした企業経営における人的資源管理の流れを知らない組織においては、成果主義的賃金制度を導入したまま、記事のような公募制を併せて採用するという非論理的な人事制度の運用をしています。もちろん、各社毎に環境は異なりますから、成果主義的賃金制度と公募制を併せて導入しているが、その運用は相互に効果的な場合もありますから、以上の一般的な考えが成り立たない組織もあるでしょう。大事なのは、その組織で働く人たちに、当該人事制度を運用する経営側の理念が伝わっているかどうか、ということです。
成果主義などは、金銭給付という衛生要因により働く人のモチベーションを上げようとしました。これは外発的動機付けの方法です。一方、働く人がやりたいことをやらせる、という手法は内発的動機付けと言えます。言い換えれば、働く人の側にとって主体的な動機付けです。
自己申告書により人事異動の意向を人事課に対して表明することができますが、これは人事課がどれだけ当該職員の意向を汲み取るか次第という一面があります。しかし、公募制は、働く人のキャリア形成に対する自主性を大幅に認めるものと言えるでしょう。
公募制というベスト・プラクティスを導入するのは容易です。しかし、この制度により求める成果を挙げる難しさは、やりたい人が素直に手を挙げられるような組織環境があるかどうかや、そもそも職員にキャリア意識があるかどうかにあります。役所の部署には、一般的に「陽の当たる部署」と「陽の当たらない部署」や「人気のある部署」や「人気のない部署」があるとされています。「陽の当たる部署」への異動やポストに手を挙げると、回りの職員の目が気になって手が挙げられないものです。また、自らのキャリアについて考える人たちも、「キャリアは、人事課から与えられるもの」という意識があり、それを他人に知られたくない、ということもあるようです。そういう場合は、職員の意識改革が必須です。そして、この「職員の意識改革」こそ最も難しい課題の一つであり、難しいからこそ、自分のキャリア形成の一部として、私は取り組みたいと考えます。
確かに難しいことだとは思いますが、日本的志向から考えると、手を挙げにくいことに、最初に手を挙げると変人扱いされますが、それにデメリットがなく、少々のメリットはあることが分かると、パラパラと手が挙がるようになるのではないかと思います。
下の挙げた参考文献のうち、元群馬県職員の多田稔氏による「公務員の意識改革-組織文化の観点から(PDF)」は特にお勧めです。
(参考文献)
「社内公募・FA制度事例集―自律人材を活かす11社の仕組み」(日本経団連出版)
柏尾眞津子「外発的動機づけと内発的動機づけ(PDF)」(大阪人間科学大学)
滋賀県「職員の意識改革を徹底する(PDF)」
多田稔「公務員意識改革のブレイクスルー(PDF)」
多田稔「公務員の意識改革-組織文化の観点から(PDF)」
産労総合研究所「ホワイトカラーのキャリア開発支援に関する調査(PDF)」(2007/10)
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