肩書きと専決権
2009-12-21(Mon)
他自治体の方々と交流をして情報交換をすることの大切さを痛感したことがあります。それは同じ行政組織であっても自治体ごとに運用が異なることがあるのを知った時のことです。それまで自分の常識では、肩書きに「長」と付く人が専決権を持ち、そうでない人は専決権を持たないものだと思っていました。これは、肩書きに「長」と付く人が、いわゆるライン&スタッフのライン管理者として責を負う立場にある、という私の固定観念でした。
私が情報交換をした自治体の一つでは、「主幹」という肩書きの方が、特定の事務の専決をするということでした。私の常識では「主幹」など「長」と付かない肩書きは、いわゆるスタッフ職であり、ラインからは離れたところからラインに対して専門的な助言等を加えるのが役割で、専決権は持たないものであると認識していました。
また、スタッフ職の肩書きに「担当」という用語を「長」の前に付けるというパターンの自治体や民間企業もありました。例えば、「担当部長」「担当課長」「担当係長」といった具合です。こういう肩書きの組織では、各「担当~長」が専決権を持つところと持たないところがありました。つまり、肩書きに「長」とあるのでライン職で専決権もあるように思えますが、スタッフ職であり、専決権も持たないという役割の場合もあるということです。
この発見には、単に肩書きの名称のつけ方の違い以上の発見がありました。目から鱗のような発見は「専決権の委譲」という発想でした。具体的には、部長専決であったものを課長専決にする、つまり、特定の事項について、専決権者を上位者から下位の者に下ろすことです。専決権の委譲は、合併後の行革の中で私も取組みましたが、調べているとスタッフ職である「主幹」が専決をしている自治体があり、それが課長職より下位の職位であることを知って驚きました。恥ずかしながら、頭の固い私には、専決権を持つのは最低でも課長クラス、という固定観念があったからです。
こうした専決権の委譲といった専決規程上の制度設計は、行政経営課や総務課等の管理部門で行うのでしょうが、実際の運用がうまく行っているのかどうかが大事です。そこで、専決権の委譲を行っている自治体の現場の職員に話を聞いてみると、「最初の頃は、以前専決権者であった自分の上の人に、どうしてもお伺いを立てちゃうんだ」と話していました。しかし、何年か経つ中では、根付いてきたと言います。これは、私のように頭の固い人たちが、その固定観念から抜け出るのに時間を要したということでしょう。
聞くところによると、専決権の委譲をスムーズに行うに当たっては、他にもコツがあるそうです。それは、委譲する専決権に係る事務の範囲をできるだけ具体的に例示するか、又は限定列挙とし、当該専決事項における責任の所在を明確にするとともに、当該事務に関わる当事者間で消極的な権限争いや積極的な権限争いが起こらないようにすることだそうです。これが非常に厄介な課題でしょう。
なお、2009年9月16日のエントリー「庁内分権と組織設計2」の中で、
なぜなら、職員の高齢化とともに、肩書きを持った職員が増えてきますが、肩書きは変わっても、やる仕事は変わらないということがあり、それでは給料は上がったとしても職員のモチベーションは必ずしも上がらないからです。賃金が衛生要因と言われる由です。職務給の考えによれば、これは合理的ではありませんが、職能給の考えによれば、必ずしも不合理ではありません。つまり、職務経験とともに当該事務に対する判断能力も備わってきて、その事務の執行に対する判断を任せ、その責を負わせることは、意思決定に参加したいとか能力アップを望む職員にとって職務充実と言えるからです。
職員が削減されつつ高齢化する中で、組織の活力を維持し、人的資源を最大限活用しようとするための制度設計は、人事担当課だけでできるものではありません。組織や専決権の整備などを所管する他部門との協同が不可欠です。
私が情報交換をした自治体の一つでは、「主幹」という肩書きの方が、特定の事務の専決をするということでした。私の常識では「主幹」など「長」と付かない肩書きは、いわゆるスタッフ職であり、ラインからは離れたところからラインに対して専門的な助言等を加えるのが役割で、専決権は持たないものであると認識していました。
また、スタッフ職の肩書きに「担当」という用語を「長」の前に付けるというパターンの自治体や民間企業もありました。例えば、「担当部長」「担当課長」「担当係長」といった具合です。こういう肩書きの組織では、各「担当~長」が専決権を持つところと持たないところがありました。つまり、肩書きに「長」とあるのでライン職で専決権もあるように思えますが、スタッフ職であり、専決権も持たないという役割の場合もあるということです。
この発見には、単に肩書きの名称のつけ方の違い以上の発見がありました。目から鱗のような発見は「専決権の委譲」という発想でした。具体的には、部長専決であったものを課長専決にする、つまり、特定の事項について、専決権者を上位者から下位の者に下ろすことです。専決権の委譲は、合併後の行革の中で私も取組みましたが、調べているとスタッフ職である「主幹」が専決をしている自治体があり、それが課長職より下位の職位であることを知って驚きました。恥ずかしながら、頭の固い私には、専決権を持つのは最低でも課長クラス、という固定観念があったからです。
こうした専決権の委譲といった専決規程上の制度設計は、行政経営課や総務課等の管理部門で行うのでしょうが、実際の運用がうまく行っているのかどうかが大事です。そこで、専決権の委譲を行っている自治体の現場の職員に話を聞いてみると、「最初の頃は、以前専決権者であった自分の上の人に、どうしてもお伺いを立てちゃうんだ」と話していました。しかし、何年か経つ中では、根付いてきたと言います。これは、私のように頭の固い人たちが、その固定観念から抜け出るのに時間を要したということでしょう。
聞くところによると、専決権の委譲をスムーズに行うに当たっては、他にもコツがあるそうです。それは、委譲する専決権に係る事務の範囲をできるだけ具体的に例示するか、又は限定列挙とし、当該専決事項における責任の所在を明確にするとともに、当該事務に関わる当事者間で消極的な権限争いや積極的な権限争いが起こらないようにすることだそうです。これが非常に厄介な課題でしょう。
なお、2009年9月16日のエントリー「庁内分権と組織設計2」の中で、
フラットな組織は、将来的に有用な組織デザインである可能性があります。ピラミッド型で上意下達式の組織でポストに就けないよりも、ベテラン職員にとってフラット組織での分権は、モチベーションの維持がしやすいといえるかもしれません。
と述べた理由の一つは、この専決権の委譲です。これは、もちろん意思決定の合理化や迅速化といった課題に対する処方箋の一つでもあります。なぜなら、職員の高齢化とともに、肩書きを持った職員が増えてきますが、肩書きは変わっても、やる仕事は変わらないということがあり、それでは給料は上がったとしても職員のモチベーションは必ずしも上がらないからです。賃金が衛生要因と言われる由です。職務給の考えによれば、これは合理的ではありませんが、職能給の考えによれば、必ずしも不合理ではありません。つまり、職務経験とともに当該事務に対する判断能力も備わってきて、その事務の執行に対する判断を任せ、その責を負わせることは、意思決定に参加したいとか能力アップを望む職員にとって職務充実と言えるからです。
職員が削減されつつ高齢化する中で、組織の活力を維持し、人的資源を最大限活用しようとするための制度設計は、人事担当課だけでできるものではありません。組織や専決権の整備などを所管する他部門との協同が不可欠です。
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