役所の週末開庁で地域格差
2008-03-17(Mon)

写真は「イングランド 写真の日々」から「緑と光」
by ukphotography
【明解要解】役所の週末開庁で地域格差 経費、職員の勤務条件が壁
MSN 産経ニュース 2008.3.17 08:12
転勤、引っ越しのシーズンを迎えた。
そこで困るのが転出入の届け出など公的書類の扱いだ。
平日にわざわざ休みを取って役所に出かけられる人は少ないだろう。ただ、週末に開いて書類を受け付ける自治体も出てきている。
なぜ、地域によって住民サービスの差が出てくるのか。(特集部 津川綾子)
そこで困るのが転出入の届け出など公的書類の扱いだ。
平日にわざわざ休みを取って役所に出かけられる人は少ないだろう。ただ、週末に開いて書類を受け付ける自治体も出てきている。
なぜ、地域によって住民サービスの差が出てくるのか。(特集部 津川綾子)
役所の土日における開庁について、その是非という論点ではなく、違う角度からいくつか考えてみたいと思います。
まずは、ワークライフバランスです。
本来、休みである日に働くということは、その人の家庭生活を仕事のために犠牲にする、ということです。
24時間営業のコンビニは非常に便利ですが、深夜に勤務する人がいなければなりたちません。
需要があるから供給がある、というケインズ的な考え方もあろうかと思いますが、組織としては限られた財源の中で、また、我々労働者は社会に労働力を提供しながら自己の家庭生活と社会生活とのバランスを保とうとしているわけです。
次に、一納税者としての市民の立場からです。
コスト負担をする納税者として個々の市民のかたがたは、まずは自分の場合を尺度として転勤や引越しなどのために、どれだけ頻繁に市役所を利用するか、ということを考えるでしょう。
そして、市全体として、土日開庁に対してどれくらいのニーズがあるのか市場調査を行政側に求めるでしょう。
利用者が少ない場合は、「(土日開庁は)やらないより、やったほうがいい」という判断では、合理性を欠き「合理的な納税者」に対して返って説明がつかないことにもなります。
別の面では、利用者の職場の観点から考えることも必要です。
転勤や引越しは、仕事関係のことですから、その人が働く職場がそうした便宜を図る必要もあろうかと思います。
そうした企業努力により、社会的なコストを下げることも可能であると思います。
例えば、裁判員制度が始まりますが、これに対して有給の休暇制度を創設することも企業による社会参加であり、間接的には行政コストを下げる効果があります。
転勤に伴う転出手続きに必要なことならば、年次有給休暇などで仕事を休みやすい職場の環境づくりも必要です。
元より、転勤に伴う転出手続きは、公的コストで賄うものではなく、転勤を命ずる企業のコストで負うべきであると考える人もいるでしょう。
時代的要請という意味では、育児休業等の次世代育成のための休暇等についてもいえることです。
最後に公務員らしく実務的に考えると、引越しシーズンなど一時期の需要に対しては、政策的に土日を開庁することも良いと考えます。
その場合、時間外勤務手当ではなく、週休日の振替により対応して人件費コストを抑えるべきです。
当然、この繁忙期の同一週に振替休を取ることは困難です。その結果、25%の割増賃金が発生します。
なるべく若手の職員を出勤させて25%の人件費コストを下げた上で、利用者数との単純平均で一業務辺りの単価を算出することは可能ですが、社会科学の場合、その算出結果による合理的な解は一つではありません。
今回引用したニュース記事について一言申し上げますと、タイトルにある「地域格差」というのは、ジャーナリスティックなレトリックであり、これは「格差」というものではなく、自治体ごとの市民需要に応じた「違い」と言ったものでしょう。
これからの行政サービスには、自治体ごとにその内容や程度に違いがあって当然であり、それだからこそ、これからの自治体には高い政策立案能力と経営力が求められているわけです。
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