韓国ロケ地巡りと観光行政
2011-05-16(Mon)
今年のゴールデン・ウィークには、韓国へ行って来ました。目的は、「猟奇的な彼女」のロケ地巡りです。もう10年も前の映画ですが、たまたま昨年末に観る機会があって、遅ればせながら韓流ブームに乗っかったわけです。
学生時代、国際政治に興味のあった私は、岡崎久彦氏の「隣の国で考えたこと」などを読んで、韓国へは一度行ってみたいと思っていました。私が学生当時の韓国は国連にも加盟していなかったし、98年頃までは、韓国では日本の歌謡曲の輸入禁止など文化面での規制もされていました。歴史的な経緯もあり、韓国はこうした反日感情の強い国という印象のあった私にとって、日本における昨今の韓流ブームや日韓の文化的交流には、今昔の感があります。
また、私が「猟奇的な彼女」を観てロケ地へ行ってみようと思うにまでいたったのは、映画の内容そのものの良さよりも、この映画に日本人の情緒との共通性を感じ、韓国に非常に親近感を持ったことがあげられます。
ソウルの新村にある延世大学の公共経営大学院へ行きました。ここは、「猟奇的な彼女」では、猟奇的な彼女が乙女らしく彼氏を待つ場所として使われましたが、最近では韓国ドラマ「アイリス」でも使われています。
この校舎周辺は、広い大学の中でも趣のある美しい造りになっていて、映画等のロケで頻繁に使われるのもうなづけます。ロケに使われることが、この大学の知名度やブランド力の向上に、大いに貢献していることは言うまでもありません。これも大学の経営戦略なのでしょう。
大学の造りも他の大学と同じでは、特にこの大学がロケに使われることもないでしょうし、使われたとしても、使われなかった大学との間の競争において、知名度を上げたりする差別的・戦略的価値はないと思います。また、日本でも韓国でも偏差値の高いことが、大学の売りであることは言うまでもありませんが、何事につけても個性がなく、他の大学と同じでは、学生も集まらないでしょう。やはり、競争するには他の相手との差別化を図ることが大事ですね。
余談ですが、大学院では院生たちと政策について議論しました。日本の大学生とは違い、韓国の学生は英語がしゃべれます。政策をクリエートしていく、ということに非常に真摯かつ実直な姿勢で、こういう姿勢を持っているということは、そうでない学生との差別化ができている、または、この学生たちには付加価値がある、と私に思わせるものでした。こういう学生と一緒に磐田市役所でまちづくりに取り組みたいと思いました。この大学での経験は刺激的で、韓国滞在の4日間のうち2日を過ごしました。
「猟奇的な彼女」の象徴というと、「猟奇松」(緯度経度:37.201576,128.688751)と呼ばれる松です。ここへはソウルの清涼里駅から禮美という駅まで3時間かけて電車で行きました。ムグンファ号という全席指定の急行列車で行きます。禮美駅周辺は、辺鄙な田舎です。
禮美駅から猟奇松までは、タクシーで往復しました。駅員さんが親切にタクシーを呼んでくれ、また猟奇松に着いたら1時間後にまた私をピックアップに来てくれるようにタクシーの運転手さんに通訳してくれました。タクシー代は、往復30,000ウォン(約2,400円)と少し高めでした。
猟奇松は、撮影当時のまま健全に残っていましたが、その周りは観光用に整備されて、映画の趣はまったくなくなってしまっていて残念でした。また、禮美駅から猟奇松までの行き方も、まったく観光案内がありませんでした。10年も前の映画ですから当然でしょうが、この猟奇松周辺の整備は、数年前から始まったといいます。なんかタイミングが中途半端な感じがします。なお、駅員さんの話によると、中国からの観光客が多いということでした。
ロケ地巡りの中で、私が一番印象に残ったのは、仁川第一教会の横にある階段でした。ここへ行ってみたのは、自分の個人的な趣味だけです。レンガ造りというのに趣があり好きでした。この階段は、映画撮影のときのままの状態で残っています。
また、近くの自由公園でマッカーサーの像を観たり、たまたま公園内で催されていたイベントを観ました。この公園の回りは歴史的なものも多く、たくさんの映画やドラマのロケで使われているそうです。
私が今回ロケ地巡りをしようと思った理由の一つに、冬のソナタなどの韓流ブームの中でロケ地ツアーが脚光を浴びましたが、ロケ地巡りがそんなに良いものかと実体験したいと思ったからでした。ただ、ツアーに乗っかっていくのは性に合わないので、自分で調べてロケ地を回りました。
正直な話、ロケ地ツアーというと、なんかオバサンたちが行くもの、という感じがして、最初はあまり前向きではありませんでした。しかし、われわれの住む地域の特徴を生かしたまちづくりを進めていくため、観光行政は一つの大事な戦術ではないかと思います。その点、秋田は、韓国ドラマ「アイリス」で成功した例として挙げられるでしょう。いくら観光資源に優れ、ロケ地に使われたとしても、一番大事なのは、ドラマや映画のデキです。ヒットしなければ、ロケ地に使われても意味がありません。映画やドラマがヒットするか否かの予想は立てにくいものですが、有名俳優が起用されたり、何らかの話題性があるものについては、興行成績も良いであろうことは容易に想像できます。また、たくさんの人に磐田市に観光に来てもらい、楽しくお金を使ってもらうためには、磐田市が単にロケに使われるというだけではダメで、その使われ方や使われるモノに対して、他の地域にはない差別化されたものであることが必要です。
(参考)
「IRIS 秋田ロケ地を巡る旅マップ」
中村知子「韓国における日本大衆文化統制についての法的考察」(立命館国際地域研究)
江口涼子「映画ロケ地の誘致の効果と官の関与のあり方の考察」(政策研究大学院大学)
鈴木晃志郎「メディア誘発型観光現象後の地域振興に向けた地元住民たちの取り組み」(観光科学研究。2010年3月)
御園謙吉「地方自治体の観光政策と観光統計」(阪南大学)
学生時代、国際政治に興味のあった私は、岡崎久彦氏の「隣の国で考えたこと」などを読んで、韓国へは一度行ってみたいと思っていました。私が学生当時の韓国は国連にも加盟していなかったし、98年頃までは、韓国では日本の歌謡曲の輸入禁止など文化面での規制もされていました。歴史的な経緯もあり、韓国はこうした反日感情の強い国という印象のあった私にとって、日本における昨今の韓流ブームや日韓の文化的交流には、今昔の感があります。
また、私が「猟奇的な彼女」を観てロケ地へ行ってみようと思うにまでいたったのは、映画の内容そのものの良さよりも、この映画に日本人の情緒との共通性を感じ、韓国に非常に親近感を持ったことがあげられます。

この校舎周辺は、広い大学の中でも趣のある美しい造りになっていて、映画等のロケで頻繁に使われるのもうなづけます。ロケに使われることが、この大学の知名度やブランド力の向上に、大いに貢献していることは言うまでもありません。これも大学の経営戦略なのでしょう。
大学の造りも他の大学と同じでは、特にこの大学がロケに使われることもないでしょうし、使われたとしても、使われなかった大学との間の競争において、知名度を上げたりする差別的・戦略的価値はないと思います。また、日本でも韓国でも偏差値の高いことが、大学の売りであることは言うまでもありませんが、何事につけても個性がなく、他の大学と同じでは、学生も集まらないでしょう。やはり、競争するには他の相手との差別化を図ることが大事ですね。
余談ですが、大学院では院生たちと政策について議論しました。日本の大学生とは違い、韓国の学生は英語がしゃべれます。政策をクリエートしていく、ということに非常に真摯かつ実直な姿勢で、こういう姿勢を持っているということは、そうでない学生との差別化ができている、または、この学生たちには付加価値がある、と私に思わせるものでした。こういう学生と一緒に磐田市役所でまちづくりに取り組みたいと思いました。この大学での経験は刺激的で、韓国滞在の4日間のうち2日を過ごしました。

禮美駅から猟奇松までは、タクシーで往復しました。駅員さんが親切にタクシーを呼んでくれ、また猟奇松に着いたら1時間後にまた私をピックアップに来てくれるようにタクシーの運転手さんに通訳してくれました。タクシー代は、往復30,000ウォン(約2,400円)と少し高めでした。
猟奇松は、撮影当時のまま健全に残っていましたが、その周りは観光用に整備されて、映画の趣はまったくなくなってしまっていて残念でした。また、禮美駅から猟奇松までの行き方も、まったく観光案内がありませんでした。10年も前の映画ですから当然でしょうが、この猟奇松周辺の整備は、数年前から始まったといいます。なんかタイミングが中途半端な感じがします。なお、駅員さんの話によると、中国からの観光客が多いということでした。

また、近くの自由公園でマッカーサーの像を観たり、たまたま公園内で催されていたイベントを観ました。この公園の回りは歴史的なものも多く、たくさんの映画やドラマのロケで使われているそうです。
私が今回ロケ地巡りをしようと思った理由の一つに、冬のソナタなどの韓流ブームの中でロケ地ツアーが脚光を浴びましたが、ロケ地巡りがそんなに良いものかと実体験したいと思ったからでした。ただ、ツアーに乗っかっていくのは性に合わないので、自分で調べてロケ地を回りました。
正直な話、ロケ地ツアーというと、なんかオバサンたちが行くもの、という感じがして、最初はあまり前向きではありませんでした。しかし、われわれの住む地域の特徴を生かしたまちづくりを進めていくため、観光行政は一つの大事な戦術ではないかと思います。その点、秋田は、韓国ドラマ「アイリス」で成功した例として挙げられるでしょう。いくら観光資源に優れ、ロケ地に使われたとしても、一番大事なのは、ドラマや映画のデキです。ヒットしなければ、ロケ地に使われても意味がありません。映画やドラマがヒットするか否かの予想は立てにくいものですが、有名俳優が起用されたり、何らかの話題性があるものについては、興行成績も良いであろうことは容易に想像できます。また、たくさんの人に磐田市に観光に来てもらい、楽しくお金を使ってもらうためには、磐田市が単にロケに使われるというだけではダメで、その使われ方や使われるモノに対して、他の地域にはない差別化されたものであることが必要です。
(参考)
「IRIS 秋田ロケ地を巡る旅マップ」
中村知子「韓国における日本大衆文化統制についての法的考察」(立命館国際地域研究)
江口涼子「映画ロケ地の誘致の効果と官の関与のあり方の考察」(政策研究大学院大学)
鈴木晃志郎「メディア誘発型観光現象後の地域振興に向けた地元住民たちの取り組み」(観光科学研究。2010年3月)
御園謙吉「地方自治体の観光政策と観光統計」(阪南大学)
スポンサーサイト