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官僚に学ぶ仕事術
官僚に学ぶ仕事術 
友人の久保田崇さんが「官僚に学ぶ仕事術」(マイコミ新書)を出版されたので紹介します。久保田さんは、私と同じ静岡県出身で、いまは内閣府にお勤めの現役官僚です。久保田さんのケンブリッジ留学中に知り合いました。


第1章「仕事術」
 ここでは、世界最高峰の非効率を誇る霞ヶ関と永田町の政治システムの中で、限りある人的資源である官僚たちが、限りある時間的資源を、まるでそれが無限であるかのように仕事をさせられている過程で生まれた合理的な仕事術について説明しています。
 官僚諸氏の仕事の具体については、「官のシステム」(東京大学出版会)がおもしろく読めますが、この章は、その現場の第一線で働く官僚の実体験から生まれた仕事術についてかかれてあり、両者を読んでみるとオモシロミが増します。この章には、官のシステムの中で「出世する人の特徴」について書かれていますが、これははしたない人事の話ではなく、「仕事がデキる」とはどういうことかを成果主義の観点から分析されており、久保田さんの仕事に対する真摯さが表れています。

第2章「人脈術とコミュニケーション術」
 机に向かって制度設計をするだけで後は動かない、という人が地方公務員にも多くいます。私は部下に対して「そういう仕事の仕方をしたければ、県か国の公務員になれ、末端行政の公務員はそれじゃダメだ」と言っています。しかし、この章を読んでみて、国にも人と関わりながら制度設計をして、さらにそれを運用しようとしている人もいるのだな、と感心してしまいます。この著作の中に流れる一つの筋は、仕事の仕方に関する「合理性」でしょう。メールの書き方に触れたところでもそれが分かります。しかし、合理だけでは割り切れないのが人間であり、久保田さんがそういう部分に対して、非常に細やかな配慮をされていることが、この章では分かります。

第3章「読書術」
 情報収集の手段としての読書について書かれています。インターネット上の論文等も含め、活字媒体から情報を拾い出しストックする技術はビジネスマンとして必須です。ビジネスで読む本は、単に情報収集のためと割り切った読み方をすると、本の薄さや厚さは関係ありません。読後の感想は、活字量に対する有用であった情報の量という評価になります。こういう読み方をしていると、小学校の頃から育まれた読書感想文を書くための「読書」観が変わってきます。ちなみに、私は次の「英語術」に関係する英語の勉強法として「速読」を用いました。

第4章「英語術」
 地方公務員の場合、海外留学をすることはないでしょうから、我々には不要な章です。しかし、求められる成果を出すための手段として、戦略を練るという視点から有用な内容になっています。ここでも戦略の立て方は、合理的です。
 なお、久保田さんは、著書の156ページで「MBAの場合は、ライティング力はそれほど必要ありません」としています。私は、久保田さんのケンブリッジでの修士論文を読ませて頂きました。その内容は、私が8年間仕事として携わった「人的資源管理」に関するもので、私の得意とする分野でした。ケンブリッジで修士を取ったものだけあって、そのレベルは極めて高いと思いますが、それだけの内容のものを表現したライティング力は「それほど必要」ないというレベルだとは私には思えません。

第5章「プライベートライフ」
 この中で久保田さんは、「お客様は神様か?」という問い掛けをしています。これは価値観に関する問題ですが、「社会」のあるべき姿を考えるとき、日英での比較において、私は渡英のたびに、実はこれを考えさせられます。公共サービスのあり方やその提供主体について考えるとき、私もこれを考えます。「あれもこれも」の時代は終わりました。いまは「選択と集中」の時代です。そして、社会のあり方としては、この章で久保田さんが提言していることを問う時代が、近い将来に来ることを私は願っています。これについては、ぜひ本書をお読みください。

第6章「豊かな人生を送るために」
 私は、妻がイギリス人であることから、これまで短期間ですが10回近く渡英しています。イギリスは階級社会のようなもので、イギリスの実家は労働者階級です。中には、学部、修士、博士のすべてをオックスフォードで過ごしたというエリート中のエリートとのお付き合いもありますが、どちらの階級の人との関わりの中でも感じるのが、イギリス人の「生活の豊かさ」と「社会の豊かさ」です。日本の社会に、この豊かさが加われば、私は世界の中でも「最善の社会」ができるのではないかと思っています。

 先にも述べましたが、この本は、「最小のインプットで最良のアウトプットを実現する」ための「合理性」で貫かれています。MBAを取った人たちは、手っ取り早くカネ儲けをすることにしか興味のない合理で割り切った人情味のない連中、というのが、私のアメリカの友人たちのMBA取得者に対するステレオタイプなようです。しかし、この本は、イギリスでMBAを取った熱い官僚「久保田崇」の「人情味溢れる合理性」に触れることができる一冊だといえます。

 久保田さんのような官僚が霞ヶ関にいることは、日本の将来に対して明るい展望を抱かせてくれますが、彼のような官僚が、一人また一人と霞ヶ関を去っているのもまた事実であることが悲しくなります。久保田さんには、いつまでも「現役官僚」としてガンバって頂きたいものです。

 思えば、私が人事を担当していた8年間は、成果は少なく、ただ残業だけが多いものでした。平成17年は市町村合併という特殊事情はありましたが、12カ月間、月の残業が100時間を下回った月はありませんでした。ワークライフバランスを推奨する部門の現状として、褒められたものではありませんでした。イギリス人の妻も、半ば諦めつつもよくガマンしてくれたと思います。
 もっと早くこの本を久保田さんが書いていてくれれば、と悔やまれますが、いまはこの本に出会えたのですから、これからの自分の生き方に生かして行きます。
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プロフィール

きんた

Author:きんた
Yahooブログ「ある地方公務員の隠れ家」(since 2007/2/24)から移転しました。

【自己紹介】
・1964年 静岡県浜松市生まれ

【趣旨】
まちづくりと公共政策について考えます。
本ブログは私的なものであり、私の所属する組織の見解を反映するものではありません。

【論文等】
政策空間 2007年10月
複線型人事は新たなモチベーション創出への挑戦
政策空間 2009年2月
資源ベース理論による自治体人事戦略の構築

【連絡先】
下のメールフォームからお願いします。

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