時間外勤務の管理(その2)
2008-02-14(Thu)
ブログ「初心忘るべからず」のtihoujiti様の記事「問題の所在は」」経由で、昨日の記事「時間外勤務の管理」で検討した時間外勤務に関連して、考えてみました。
「教員給与に残業手当 教職調整額見直しの方向-勤務時間管理など課題も・文科省]
2月9日15時1分配信 時事通信
古い資料となりますが、「教職員給与の在り方に関するワーキンググループ(第15回)」で配布された「教職調整額の見直しについて(案)(資料2-1)」に、教員に時間外勤務ではなく教職調整額が支払われる背景として、次のようにあります。
教員の職務は自発性・創造性に期待する面が大きく、夏休みのように長期の学校休業期間があること等を考慮すると、その勤務の全てにわたって、一般の公務員と同様に、勤務時間の長短によって機械的に評価することは必ずしも適当ではなく、とりわけ時間外勤務手当制度は教員にはなじまない。
この考えに則って、法整備がされています。(「同資料2-2「時間外勤務に関する法令上の根拠」を参照)
では、この考え方がどうして見直されるようになったのかというと、次の点が指摘されています。
① 昭和41年の勤務状況調査の結果と比べ、残業時間が増加している。また、同結果によれば、例えば、通常期の小中学校の教諭の1日あたりの平均残業時間が5時間以上の者がいる一方で、0分の者もいるなど、教員間の勤務時間の差が著しく大きくなってきている。(教員勤務実態調査暫定集計の結果)
② 教員間の仕事量への負担感の差が開いている。(文部科学省が平成18年に実施した教員意識調査の結果)
以上のことから、教職調整額の制度と実態との乖離が進んできていることから、教員に一律支給されている教職調整額の在り方について見直しを行う必要がある、ということになっているようです。(「今後の教員給与の在り方について(答申素案)」の「第3章 メリハリある教員給与の在り方」参照)
時間管理がなじまないと言いつつ、平均残業時間を5時間とか0分などと算出しているということから、正規の勤務時間という概念は教員にもあるようです。
質的なものというか、個人の仕事のデキに対する納得度を考えると、時間管理に馴染まない側面があるのも分かります。
また、同じ教員でも小学校、中学校、高校で異なるでしょうが、クラブ活動の指導等、確かに正規の勤務時間外に通常の教育活動の一環として行うものもあると思います。
しかし、基本的には、決められた時間内で、求められる質を成果としてアウトプットする、というのは、教育公務員であろうが、一般行政職であろうが、民間人であろうが変わりないのではないでしょうか。
求められる成果が明確でないと時間管理が不明確になり、適正な労務管理の根本が揺らぎます。
その求められる成果を明確にするのが目標管理制度における目標設定であり、それを補完するのが上司との面接制度ではないでしょうか。
再任用職員を校長に充てるという記事も見られますが、短時間職員を常勤の職の時間外勤務に相当するような業務に補完的に任用することなどはできないのでしょうか。
これも、「増員により空き時間を増やし、その空いた時間に本来業務を行う」といった考えと同じで対症療法的な措置であり、根本的な解決にはなりません。
本市の教育委員会の指導主事の先生とも話しましたが、教員自身が発想の転換をして仕事のやり方を変え、そのための環境整備を進めなければ、今のまま時間外勤務手当を導入しても混乱を招くだけであろう、ということでした。
市立高校や義務教育における市費負担教員を持つ自治体においては、教育公務員に関することとはいえ、気になるトピックです。
kei-zu様は、2008年2月12日の記事「公立保育園:出産時の入園予約制度 東京・品川区」に関連して、保育行政OBのかたとお話をされたようです。
私も今回の件では、教育委員会の指導主事とお話をする機会を持ちましたが、こうして、フト疑問に思ったことについて、その現場のプロから直接所見を伺えるというのは、非常に刺激的で恵まれたことだと思います。
(参考)
財務省の主張:財政制度等審議会 財政制度分科会 財政構造改革部会(平成19年10月12日)
文部科学省の主張:教育委員会月報 平成19年7月号(No.694)
「教員給与に残業手当 教職調整額見直しの方向-勤務時間管理など課題も・文科省]
2月9日15時1分配信 時事通信
文部科学省は9日、公立小中学校の教員給与に、時間外勤務手当を導入する方向で検討に入った。
仕事のどこからが残業かを明確に区分することが難しい教員については現行、給与月額の4%を残業分とみなした「教職調整額」が一律支給されているが、同省は勤務実態に応じた公平な配分に改める方針だ。
仕事のどこからが残業かを明確に区分することが難しい教員については現行、給与月額の4%を残業分とみなした「教職調整額」が一律支給されているが、同省は勤務実態に応じた公平な配分に改める方針だ。
古い資料となりますが、「教職員給与の在り方に関するワーキンググループ(第15回)」で配布された「教職調整額の見直しについて(案)(資料2-1)」に、教員に時間外勤務ではなく教職調整額が支払われる背景として、次のようにあります。
教員の職務は自発性・創造性に期待する面が大きく、夏休みのように長期の学校休業期間があること等を考慮すると、その勤務の全てにわたって、一般の公務員と同様に、勤務時間の長短によって機械的に評価することは必ずしも適当ではなく、とりわけ時間外勤務手当制度は教員にはなじまない。
この考えに則って、法整備がされています。(「同資料2-2「時間外勤務に関する法令上の根拠」を参照)
では、この考え方がどうして見直されるようになったのかというと、次の点が指摘されています。
① 昭和41年の勤務状況調査の結果と比べ、残業時間が増加している。また、同結果によれば、例えば、通常期の小中学校の教諭の1日あたりの平均残業時間が5時間以上の者がいる一方で、0分の者もいるなど、教員間の勤務時間の差が著しく大きくなってきている。(教員勤務実態調査暫定集計の結果)
② 教員間の仕事量への負担感の差が開いている。(文部科学省が平成18年に実施した教員意識調査の結果)
以上のことから、教職調整額の制度と実態との乖離が進んできていることから、教員に一律支給されている教職調整額の在り方について見直しを行う必要がある、ということになっているようです。(「今後の教員給与の在り方について(答申素案)」の「第3章 メリハリある教員給与の在り方」参照)
時間管理がなじまないと言いつつ、平均残業時間を5時間とか0分などと算出しているということから、正規の勤務時間という概念は教員にもあるようです。
質的なものというか、個人の仕事のデキに対する納得度を考えると、時間管理に馴染まない側面があるのも分かります。
また、同じ教員でも小学校、中学校、高校で異なるでしょうが、クラブ活動の指導等、確かに正規の勤務時間外に通常の教育活動の一環として行うものもあると思います。
しかし、基本的には、決められた時間内で、求められる質を成果としてアウトプットする、というのは、教育公務員であろうが、一般行政職であろうが、民間人であろうが変わりないのではないでしょうか。
求められる成果が明確でないと時間管理が不明確になり、適正な労務管理の根本が揺らぎます。
その求められる成果を明確にするのが目標管理制度における目標設定であり、それを補完するのが上司との面接制度ではないでしょうか。
再任用職員を校長に充てるという記事も見られますが、短時間職員を常勤の職の時間外勤務に相当するような業務に補完的に任用することなどはできないのでしょうか。
これも、「増員により空き時間を増やし、その空いた時間に本来業務を行う」といった考えと同じで対症療法的な措置であり、根本的な解決にはなりません。
本市の教育委員会の指導主事の先生とも話しましたが、教員自身が発想の転換をして仕事のやり方を変え、そのための環境整備を進めなければ、今のまま時間外勤務手当を導入しても混乱を招くだけであろう、ということでした。
市立高校や義務教育における市費負担教員を持つ自治体においては、教育公務員に関することとはいえ、気になるトピックです。
kei-zu様は、2008年2月12日の記事「公立保育園:出産時の入園予約制度 東京・品川区」に関連して、保育行政OBのかたとお話をされたようです。
私も今回の件では、教育委員会の指導主事とお話をする機会を持ちましたが、こうして、フト疑問に思ったことについて、その現場のプロから直接所見を伺えるというのは、非常に刺激的で恵まれたことだと思います。
(参考)
財務省の主張:財政制度等審議会 財政制度分科会 財政構造改革部会(平成19年10月12日)
文部科学省の主張:教育委員会月報 平成19年7月号(No.694)
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